内容説明
日本と中国には共通の神がいた
日本各地の川のそばには、数多くの石碑「文命碑」が立つ。“文命”とは古代中国・夏王朝の「禹王」の別名で、その伝承は治水の思想のほか、「平成」「疎通」などの言語、相撲の四股など、日本語と日本文化に深い影響を与えてきた。日中での伝承の実像と日本に渡来した経緯を解明し、文化的な相互理解の可能性を探る。
[内容]
序章 「治水神」の渡来
第一章 禹王はいかにして日本の神となったか
第二章 なぜ、京都御所の襖絵に禹王が描かれたのか
第三章 なぜ、九尾狐は禹王にとりついたか
第四章 どのように禹王は現代に生きているか
終章 東アジアで共有される禹王
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
志村真幸
3
著者は日中比較文化を専門とする研究者。 本書は、古代中国の治水の神として崇められる禹王が、日本でも信仰の対象となってきたことを明らかにしたもの。江戸期に酒匂川の堤がつくられた際に祀られた例や、20世紀の後半になっても各地で碑が設けられた例がとりあげられる。びっくりするほど数が多く、いかに日本人が治水に苦労してきたかがよくわかる。 さらに中国には禹王の子孫がいること、台湾や朝鮮半島では少し形を変えて信仰されていることも語られており、興味深い。 2019/12/25
takao
2
日本にもある禹王碑。古事記・日本書紀にも記載あり。2020/09/03
さとうしん
2
日本と中国、そして分量としては少ないが朝鮮半島における禹王伝説の受容史。禹が活躍したとされる「夏」代の話になると途端に話が怪しくなるのは仕方ないのか……2015/01/07
霹靂火 雷公
1
「治水」で高名な聖君・禹については知っていたが、日本において「治水神」として各地で祀られ、果ては九尾狐との繋がりもあったことに驚かされた。最後にチラッと宮沢賢治の名が出るが、(見落としたのか)唐突過ぎて消化不良。ちくま文庫『宮沢賢治全集 4』が挙げられているので、そちらも目を通したい。2015/02/18
けつ
0
禹王に関する日本の遺跡が建立された時期が江戸期以降に集中している点、日本人の教養がいかに形作られたかを考えるうえで興味深い。また、禹王が中国では聖王、聖人といわば万能の神とされているのに対し、日本では治水の神にされている点も改造好きな日本人の特質を示したものとして興味深い。2015/07/22