内容説明
出版不況にあえぐ大手出版社『仙葉書房』。そこに勤める中堅文芸編集者・真壁のもとに、一通の手紙が舞い込んだ。それは、新人時代からいがみ合いながら共に成長してきた担当作家・樫木重昂からの『遅れてきた遺言』。「真壁、俺の本を親父に届けてくれ――」。 樫木の父親は生粋のドイツ人。日本文学は読むことができないため、作品を翻訳する必要があった。真壁は『遺言』を胸に、超マイナー言語である日本語で書かれた『名作』を、世界に羽ばたかせる決意をする。出版業界と翻訳業界の狭間で東奔西走する文芸編集者の苦悩、その行く末は……!?
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
MINA
46
やっぱり本好きだからか、編集者とか出版業界をテーマにしてあるものはついつい手が伸びちゃう。これも然りで、タイトルがもうね、読むしかないよな吸引力が凄かった。オノマトペって日常会話では全然意識しないけどちゃんと使えると心が静かになっていくような綺麗な気持ちになれる気がする。例えば今現在私がいる場所豪雪だけど、“しとしと”じゃなく何て言うに相応しい?と考えると楽しい。脱線したけど、内容すごく良かった。翻訳をテーマにした本は読むの初めてかも。改めて翻訳事情を踏まえた上で海外で訳された本読み直してみようかな。2016/12/11
よっち
41
急逝した担当人気作家・樫木の死から立ち直れずにいた編集者・真壁が、生き別れたドイツ人の父親に本を届けて欲しいという樫木の遺言を実現するために奮闘する物語。ベストセラーでも海外向けの翻訳はごくわずかという厳しい現実に直面しながら、諦めずに道を探ったり運良く出会えたドイツ人翻訳者と衝突したり理解していく過程は、真壁自身にとっても樫木の死を受け止めて前に進むために必要なことだったのかなと思いました。心地よい読後感のある物語ですが、一度は翻訳の話を突っぱねたルイルイと和解後の描写がもう少しあると良かったですかね。2015/01/26
はな
31
図書館本。大手出版社の編集さんが担当作家さんの本を海外に売り出す~と言う内容。初めは、どんな展開になるのか、この編集さんは憤ってばかりだなぁという印象でしたが、主人公の編集さんの思いや亡き作家さんや周りの人物の情熱を読み進めていくうち、じわじわとすごいなぁと感じました。そして読んでいる中で思ったのは、日本語って難しいのだなと言う再発見。日本人でも難しい時があるのに、日本語母語じゃない人にとっては、難解だよねと感じました。それと同時に豊かな表現ができる日本語ってすごいとも思えました。2015/04/14
coco夏ko10角
30
翻訳って思ってた以上に大変だ。日本語って確かに擬態語多いなぁ。クラウスが口にする疑問に答えられない…。「この場面での『どうも、こんにちは』の『どうも』とは?」「山々や人々が良くて犬々が駄目なのはなぜ?」うーん、他にも色々。日本語の難しさ、そして面白さを再確認できた作品でした。2015/09/20
はる
27
亡くなった作者の本をドイツにいるお父さんに届けたいって言う担当編集者の熱意が凄い!また、ここまで編集者に愛される作者も羨ましい。その思いに応えたいって思う翻訳者、全員のぶれない気持ちや熱意が私にも伝染して読んでて熱くなりました。それにしても海外に日本の小説が進出してないのがガッカリ。2016/10/09