岩波新書<br> 被災弱者

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岩波新書
被災弱者

  • 著者名:岡田広行
  • 価格 ¥880(本体¥800)
  • 岩波書店(2015/05発売)
  • ポイント 8pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315308

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内容説明

東日本大震災の集中復興期終了を目前に,復興から取り残されている人びとがいる.「いつまで被災者なのか」と弱者を切り捨てるなら,社会はその負債を将来にわたって抱え込む――そして誰にとっても人ごとではない.くらしと生業の再生に必要なものは,巨大プロジェクトではない.災害多発国日本のあやうさを現場から問う.

目次

目  次
   はじめに──被災は今も続いている

 第1章 プレハブ仮設住宅で
    「ミスター仮設住宅」の孤軍奮闘/ 「見守り」は続けられているが……/ボランティア活動の意義/フェイスブックで情報を発信/可視化される被災地の問題/被災者を苦しめる仮設住宅/傾斜・老朽化/入居者を脅かすカビ/カビ増殖の原因/健康状態の悪化
 第2章 みなし仮設で
   みなし仮設親睦会「若松会」/みなし仮設とは/みなし仮設の功罪/劣悪住宅に泣き寝入り/将来の家賃負担/貧困固定化の危惧
 第3章 在宅被災者という存在
   暗闇の町で/支援対象外の被災者/食料を届けた石巻市/弁当配給に困憊した町内会長/家屋修繕の遅れ/前例のないアセスメント活動/閉じられたICTデータベース/第三ステージの支援は/住宅修繕調査から見えてきた現実
 第4章 被災者とは誰なのか
   不公平な扱い/罹災証明をめぐる問題/無力だった災害対策基本法/硬直的だった運用/住宅応急修理の実態/支援対象の線引き/移動弱者支援/集える場所・うたっこライブ/医療費免除再開の実態/後期高齢者もぬか喜び/生活保護打ち切り/菅原茂・気仙沼市長に聞く
 第5章 子どもたち──学校と遊び場は取り戻せたか
   バスケットボール教室で/子どもに寄り添う/失われた放課後/一〇〇〇人以上がスクールバス通学/間借り授業の苦労/ボランティアが給食支援/生まれた学校間連携/広がる学校間格差/変わる支援の内容/学校は地域復興のシンボル/新しい子どもの居場所
 第6章 生業再建の希望と困難
   二次災害のダメージ/冠水被害の農地/いちご農家の試練/ボランティアが再開を後押し/現地再開と高設栽培と/ボランティアの存在/浜の在宅被災者からの手紙/養殖業の再開/事業継続の壁/自営業者の多重債務/機能しないガイドライン/グループ補助金めぐり明暗/一目置かれた伝統産業/事業断念した中小企業/資格取得から一歩を踏み出す
 第7章 復興事業の不条理
   災害危険区域設定/自治会の解散、消えていく集落/ 「住民合意」を尊重した地域も/雄勝町の誤算/高台移転の代償/議論を仕切る行政/そして人口流出は起きた/住民が戻らない「可住地域」/産業系ゾーンに指定された住まい/住民を悩ます道路計画/遅れる住まいの再建/復興予算の見直しが急務
   あとがき
   主な参考文献

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

壱萬参仟縁

29
被災者を苦しめる仮設住宅(15頁~)。カビとの戦い(22頁~)。アレルギー症状悪化。無力だった災害対策基本法 (80頁~)。災害救助法の活用に不慣れな自治体職員は、県や国に伺いを立て、国の認定待ち(84頁)というお役所 仕事でスピード感のかけらもない。自治会の解散、消えていく集落(168頁~)。高台移転を巡ってひと悶着あり、 行政は一度決めたら後戻りできないという柔軟性のない考え方のようだ(180頁)。選択肢を絞り過ぎて住民からは苦情 が出されたのである(179頁)。 2015/03/26

501

22
東北大震災から4年経過した現場の状況を、被災者、被災者を支えたボランティアグループの活動を視点に、ドキュメントタッチで伝える。タイトルの通り、不手際の多い行政に生活苦を強いられる被災者の姿を追う。被災者と一口でいっても、老若男女、生活基盤、被害のあり方など様々な立場があり、様々な思いがある。それを読者に伝えたいという筆者の熱意が伝わってくる。その反面、やや詰め込み感があり、散漫になっているきらいがある。もう少し丁寧な深堀りがされていると良かった。2015/07/16

カイ

19
ルポに近い形で2014年時点の被災者の状況を伝えている。「チーム王冠」のボランティア活動を主体として被災者が今も社会的弱者として生活困窮者となってしまっていることや、生活再建が滞っていることがよく分かる。特に被災者間の格差や在宅被災者がサイレントマジョリティとして支援から取り残されていることが危惧される。震災から数年が過ぎ、過剰な支援は被災者の自立を阻害するとして復興支援は急激に減少しつつあるが、その裏でこうした被災者の存在を忘れてはならない。2015/07/05

twinsun

7
“たまに来るんじゃなくてここで開業したら”、医師に投げつけられる言葉。決して見せかけの自己満足の善意から被災地に足を踏み入れているわけでもないものの平和な日常に帰ることができる者への羨望を込めた辛い現状から出る真実の叫び。あまりの惨状に自分が当事者でないことに安堵しながら後ろめたい思いを感じながら読むことを予感しながら手に取った。本書に綴られた被災地の人々の背負ったものは気の遠くなるほど重い。10年前の出版だが時折メディアに流れる現地の人々の声から察するに本書で語られた課題はなお新鮮だ。2025/03/10

玻璃

7
ここに書かれていること、特に在宅被災者の状況が発災からまだ間もない時期のことではなく、つい最近の取材に基づいた現在進行形のものであることに衝撃を受ける。一読して「国は、行政は何をやっているんだ」と思う部分は多々あるかもしれないが、現地の公務員も被災者であって混乱を極めていたのを考えれば無理もないと思うし、そもそも国は画一的なことしかできないものだから、広大な被災地の状況をきめ細かく把握することさえ無理(とはいえ復興予算の流用等は論外)。その隙間を埋めるボランティアの役割は本当に大きい。2015/07/19

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