内容説明
一九四五年,朝鮮は日本の植民地支配から解放された.二〇一五年は七〇年の節目の年になるが,日本と南北朝鮮との間には今なお問題が山積である.在日朝鮮人をめぐる問題もその一つである.植民地期の在日朝鮮人世界の形成,解放から高度成長期以後の世代交代と多様化,そしてグローバル化へと至る現在までを扱う.
目次
目 次
まえがき
第1章 定着化と二世の誕生──在日朝鮮人世界の形成
1 併合前の朝鮮人労働者
2 一九一〇年代の在日朝鮮人
3 関東大震災と朝鮮人虐殺
4 植民地支配と人口流出のメカニズム
5 定着化と集住地区の形成
6 朝鮮人のさまざまな運動
第2章 協和会体制と戦争動員
1 世界恐慌期の渡航・移民問題
2 朝鮮人コミュニティの変容
3 協和会体制
4 強制連行・強制労働
5 戦時期の在日朝鮮人
第3章 戦後在日朝鮮人社会の形成
1 戦後在日朝鮮人の出発
2 占領政策の転換
3 朝鮮戦争下の在日朝鮮人
4 在日朝鮮人運動の転換と帰国運動
第4章 二世たちの模索
1 日韓会談と在日社会
2 在日朝鮮人社会の変容
3 二世たちの挑戦
4 転換期の思想と文化
終 章 グローバル化のなかの在日朝鮮人
1 多民族化する日本社会
2 「国民の論理」を超えて
参考文献(著者名の五〇音順、朝鮮人著者名は日本語読み)
年 表
図版一覧
重要語
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
Francis
23
韓国併合以前からの在日朝鮮人の通史。何となくわかったつもりではあったが、ここまで詳しくは知らなかった。特に戦後の在日朝鮮人史は彼らの出身地朝鮮半島の政治的分断に強く影響されてとても複雑。だが人口減少対策として移民の受け入れ及び多文化共生社会への移行が模索されている今、先行者としての在日朝鮮人の歴史を知ることはとても大事なことであると言えよう。2018/06/28
coolflat
19
1910年の韓国併合によって朝鮮人は、自らの意思とは関わりなく日本国籍を持つ「帝国臣民」として扱われる事になった。そのため、併合後には日本への渡航や日本人と同じ扱いをされるようになったと見られがちだが、必ずしもそうではなかった。渡航に関しても、居住に関しても、日本人とは異なる処遇を受ける場合が多かった。そもそも、日本人(当時は「内地人」と呼ばれた)と朝鮮人は戸籍で区別され、法律的にも異なる扱いを受ける事となった。朝鮮では、併合の前年、統監府の主導下に民籍法が制定され、朝鮮人を民籍に登録する作業が行われた。2017/08/21
樋口佳之
18
国民や国籍による囲い込みや排除、切り分けを支えてきた血統主義や単一国籍主義という考え方は、二一世紀の韓国社会では明らかに崩れつつある。それは、国民についての画一的な見方を前提に常に日本か本国かの選択を迫られてきた在日朝鮮人のあり方にも新しい可能性を開くもの2017/08/28
ナハチガル
13
隣の国のことをよく知らないというのも奇妙な話だが、その隣人たちが昔からこの国に住んでいるのに彼らのことをよく知らないというのも劣らず奇妙な話だ。知らなかったことにたくさん触れることはできたが、なぜ知らなかったのか、なぜ今まで知ろうとしなかったのかについて考え始めると、底なし沼にはまってしまいそうでもある。在日の人びとに対してやや肩入れしすぎている感が無きにしも非ずではあるが、真摯で良心的な本だと思う。A+。2020/05/03
まちゃ
12
自分用メモ 1910年代朝鮮人は自らの意思とは別に日本国籍をもつ帝国臣民とされたが渡航や住居に関して日本人同等の扱いはされなかった。関東大震災では朝鮮人が井戸に毒を投げ込んだなどの根拠のらないデマにより6415人が警察や自衛団に捕まり虐殺された。正確な死者数は政府が事実を隠す為に調査を妨害したので不明だか数千人単位である。原因→植民地支配下にあっても三一独立運動などの日本への抵抗から恐ろしい存在と認識されていたから。1939日本の戦争遂行の為に朝鮮人男性を内地に強制連行、強制労働。2020/08/26