内容説明
仕事場から見える「新宿」は、不気味だ。地下鉄駅に佇む「夕子」。蛇をポケットにしのばせる詩人。スピーカーを背中にしょって説教する男。そしてぬめぬめの「新宿シルクロード」を酒場に向かって無気力に旅する男たち―。「新宿」という街は、それら孤独や喧噪や疲労をものみ込んで、また立派な朝を迎えていく。虚実の間を鋭くかつ緩やかに描く現代の「都会の憂鬱」。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
shizuka
59
突然懐古シリーズ(不定期)の栄えある第一作目はシーナ・マコト。高校生の時、どはまりしてもうとにかくドンドン、ズンズン、とことん読むのだ、読んだのだ。うら若き乙女の心をむんずと鷲掴みにした色黒、酒飲みのおじさん、本当にシーナさん一色の青春時代。嗚呼。言葉が続かない。学祭の準備を抜け出して新橋のサイン会へ行ったよね。映画を撮ると知ったら並んでチケット買ったよね。わけのわからない講演会にも行ったよね。少し大人になったら突然色あせちゃって、お金ないからと蔵書全部売っちゃったよね。なつかシーナ。また少しずつ読もう。2017/02/27
佐々陽太朗(K.Tsubota)
33
私小説といってよいのだろう。エッセイにも似た文体だが椎名誠をして昭和軽薄体と言わしめたものとはテイストが違う。作品全体を覆う暗さはなにゆえか。無言電話に午後三時の人妻・夕子もしくは沙織もしくは志津乃、屋上給水タンクの中のゴケアオミドロ、ブルータスのサワダ、別居中の妻、右翼のタジミヨシオ、南米産の大蛇その名もクサカ・シノブ、白濁鰐目男・沢野ひとし、カフカの変身ざわざわ虫と得体の知れない有象無象が頭の中に棲む。今日もシーナはある種の憂鬱を身に纏いながら新宿シルクロードぬめぬめルートの旅人となる。(再読)2011/10/15
neputa
10
大都会「新宿」を独特な文章で奇妙奇怪に描き出すエッセイのような私小説のような一作。豪快に世界中を駆け巡り大自然と冒険とビールが似合う男「椎名誠」のあまり知られていない一面に触れることができる。豪快で快活な印象の著者だが、当時ウツを患い医師を頼っていたという話を別のエッセイなどで読んだことがある。彼が描き出す壮大なSF世界や、人間の心の最も純粋な部分をまじりっけなしに表現する文学作品などは、実は混沌としたカオスような著者の脳から反動的に生み出されているのかもしれない。そんな思いを強くしたのがこの作品だった。2017/08/06
けいちゃっぷ
8
シーナワールドを期待すると肩透かしを食います2008/10/02
のんたん
6
この本が椎名氏との出会い。こんなに軽妙な、リズミカルな、吸引力のある「正しくない」文章を初めて読んで高校生のあたし(20年前w)は驚愕した。あたしにも書けると高慢に思い、しかし書けずに愕然とした。オヌヌメ!2007/06/23