内容説明
元キックボクシング全日本チャンピオンの萩野(おぎの)は、妻と幼い息子と共に、平凡だが幸せな日々を送っていた。
しかし、ある事件をきっかけにヤクザに目をつけられ、非合法の格闘技イベント「ダンスパーティー」への参加を強いられたことで、彼の日常は一変する。
断ろうとした荻野だが、今は亡き恩人の息子・誠司(せいじ)が残虐な闘いを愉しむチャンピオンとして君臨していることを知り、参加を決意する。
「何が本当の強さか、教えてやるよ。誠司!」誠司を改心させるため、そして、秘められた過去に決着をつけるため、
荻野は「ダンスパーティー」のリングに立つ。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
むぎじる
41
キックボクシングのチャンピオンである横尾に、挑戦した荻野。接戦の末、荻野が勝利したが、試合後横尾は命を落としてしまう。それを機に引退した荻野は、キックから遠ざかる生活を送っていた。ある出来事から、組が運営する「ダンスパーティー」というアンダーグランドの殺し合いに参加させられることに。そこには、因縁の相手が待っていた。さまざまな葛藤にからめとられながらも、逃げることなく、荻野は愚直なまでに自分の想いにまっすぐ進んでいった。生きること、本当の強さを教えてくれた横尾のために。ハードボイルドですっきりした読後感。2015/07/26
アポロ
39
軽い気持ちで読み始めたら面白かった!うん、満足した!2021/12/08
桜子
29
爽やかなスポーツ小説をイメージして読み始めたが、なかなかのハードボイルド。男臭さや力強さが滲み、テーマもなかなか重く、作家さんの名前や表紙からは良い意味で裏切られたお話でした。キックボクシングの試合後、対戦相手が試合の際のパンチで亡くなってしまい、心の中に罪の意識を閉じ込めてしまッた主人公。あの時から時間が経ち、父となり、どう生きるべきか。生き方や幸せは人それぞれで、大切にするべきものは違うかもしれないけど、この本に出てくる主人公の生き方はカッコよかった。そうそう、男性作家さんなんだね。読むと納得。2021/02/07
まる子
13
第1回本のサナギ賞優秀賞。キックボクシングでチャンピオンになった荻野健二は兄と慕うほどの横尾を結果的に亡くしてしまった。ダンスパーティという名の死闘のリングで戦っている横尾の息子に本当の強さを教えるためにあがったリング。死ぬか生きるかの極限の中で、父親の背中、あの時を思い出した誠二の中に映った健二の姿は…まさにアナザーファイト!健二の後悔は誠二への未来へと。熱い中に、スポーツを通して生きるために必要な「強さ」を教えてくれる本。あとがきを読んで、著者の草花由さんは男性かな?デビュー作とは思えない作品でした。2022/04/11
メガネ
13
久々のunlimitedヒット作。大阪から沖縄へ向かう2時間のフライトで一気に読み終えました。格闘を通して人生を悟るような物語は今までにも数多く読んできましたが、この作品はその中でも印象に残る一冊になると思います。特に主人公の心理描写が繊細に描かれていて、読み進めるほどに引き込まれて行きます。何事においても、誰かのために頑張ろうという気持ちよりも、結局は「自分自身のために」頑張ろうという強い気持ちの方が人は内に秘めた力を発揮しやすいのだと感じました。良作。読んでよかった。2021/07/12