内容説明
2014年における史学界最大の話題は『昭和天皇実録』の完成でした。天皇裕仁の一生と「昭和」という時代をいかに描き、評価するか……。この点において『実録』編纂者の苦心は並々ならぬものがあったと思われます。同時にこれを読む側も眼光紙背に徹する必要があります。そのためにもマッカーサーとの会見など『実録』の資料ともなった本書『侍従長の回想』はきわめて重要なものです。多くの読者の目に触れることを願います。(講談社学術文庫)
感想・レビュー
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南北
36
海軍大将で当時は明治神宮宮司だった著者が昭和19年8月に侍従長に就任した後、21年5月に辞任するまでの期間の回想を記したものである。昭和天皇のおそば近くにいる侍従長の目から見た終戦までの経緯と戦後の混乱する状況がよくわかる。毎年夏になると新聞やテレビが戦争の話題を持ち出すが、今年は戦後80年目にあたるので、これまで以上に取り上げることが予想されるが、当時の人たちが残したこうした記録を読むことが戦争を理解する上で最も有効な方法だと思う。2025/08/04
梅干を食べながら散歩をするのが好き「寝物語」
19
▼太平洋戦争の終戦時まで昭和天皇の侍従長をしていた著者による手記。▼終戦期の昭和天皇の言動を記録した書物として、類書に比べて桁違いに価値が高い。同時期の天皇の言動を知るための必読の書と言えよう。▼ただし、著者の主観が入ってる可能性があることと、著者が知り過ぎている事柄や、公表すべきでないと著者が判断した事実については、オブラートに包んでいるか、それを改変して記録している可能性がある。そのことを含みつつ読む方が良いだろう。▼いずれにしても、日本史の記録の一つとして一級の資料であることには間違いがない。2021/08/20
若黎
13
回想録にありがちな堅苦しいところがなく、大変読みやすい文章でした。終戦前後の昭和天皇の苦悩と孤独が伝わってくるような気がします。 なぜ藤田侍従長が短期間だったのか理由を知り、些か残念でした。もう少しお側にいてもらいたかった気がします。 また、ちょこっと出てきた甘露寺侍従のお茶目な発言が、ホッとさせてくれるところです。 まあ、宮中のことなので秘匿すべきは秘匿されているとは思いますが、読んでよかったと思います。2023/02/27
こまったまこ
11
戦争末期から戦後まで天皇陛下の侍従長としてお側に仕えていた方の回想録です。他の終戦前後を題材にしているお話はこの本を元にしてると思います。常に陛下のお側に侍立してその政務・軍務を補佐する立場にあるのでかなり重要なことを見聞していて興味深い。陛下が開戦を阻止出来なかった理由や、切実に願っていた終戦を鈴木貫太郎との二人三脚だったから出来たことなど知ることができて良かったです。2015/10/08
かっくん
9
終戦時に侍従長として昭和天皇に仕えた筆者の視点から、戦局悪化からポツダム宣言受諾、戦後の混乱期における昭和天皇の苦悩を回想する。終戦の事態収拾は昭和天皇なくしては絶対になし得なかったことがよく分かる。戦争を終わらせた天皇が、なぜ戦争開始を止められなかったのか、などという問いがいかに愚かなことか。立憲君主として振る舞われた天皇の姿に心打たれる。2024/09/22