内容説明
二年間にわたり交わされた、ホスピス医療に携わる医師と詩人の心震える往復書簡。老いた人の死、若い人の死、信仰に支えられ死を受け入れる人と、「くやしい」と叫びながら世を去る人、温かい家族に囲まれて亡くなる人と、人一人いない病室で亡くなる人……死が身近にある医師が、臨床の言葉を綴り、詩人に送る。詩人はそれに詩と散文で応える。詩が死を癒し、現実の重みを持った死が詩人に新たなインスピレーションを与える。優れたコラボレーションであると同時に、死についての深い考察のあるエッセイにもなっている。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゃが
17
気になる二人、詩人谷川さんとホスピス医徳永さんの往復書簡。臨床のエピソードを手紙に、谷川さんは詩で応え、死や家族がテーマなのだがユーモアを交えながら進行していく。そこには深く、温かく、軽みにひそむ重い「生と死」を問いかけていた。文庫化で「七年後の往復書簡」が加わっている、逸る気持ちで読んだ。よかった。徳永さんは「死のそばにいさせてもらっている、ありがたいなあ」と言い、谷川さんは「詩のそばにいさせてもらっている、ありがたいなあ」と応える。差し詰め私は「本のそばにいさせてもらっている、ありがたいなあ」かな2015/05/18
ゆき
6
お二人の往復書簡。とても素敵ですね。臨床のお話を受けて谷川さんが詩をささげる形式が素晴らしいです。詩がとても染み入ります。2017/05/07
生活相談屋
3
詩人谷川俊太郎とホスピス「野の花診療所」を経営する医師徳永進の往復書簡を一冊の本にしたもの。いやぁ、これは僕の拙い言葉で感想を綴るより一節でも引用した方が感動が伝わるだろう。「古い年の終わりに穏やかに枯れていくものたち 新しい年の初めに生き生きと芽吹くものたち そのどちらも同じひとつのいのち 切り離してしまえるものは何ひとつないのだ」2017/09/26
たゐせゐ
3
詩がない、死がない、そんな暮らしはしがない。というところから始まり、詩人は詩のそばで働くこと、臨床医は死のそばで働くことについて、お互いを慰め合って終わる。全ては1に帰化すると云う詩人にとって、生と死は超えるものであり、地続きであるもの。同じ死はなくどれもドラマチックな死であると云う臨床医は、どの人にも必ず死が訪れなければならないと云う。そうにして、「し」を248ページの中で扱ってゆく。2016/05/31
コジターレ
2
読メ登録前に読了。人の死に向き合う眼差しの優しさが印象に残っている。