内容説明
水神を祀る四つの村。奇怪な雨乞いの儀式。湖上の密室殺人。神男たちは次々と……奈良の山奥、波美地方の“水魑様”を祀る四つの村で、数年ぶりに風変わりな雨乞いの儀式が行われる。儀式の日、この地を訪れていた刀城言耶の眼前で起こる不可能犯罪。今、神男連続殺人の幕が切って落とされた。ホラーとミステリの見事な融合。シリーズ集大成と言える第10回本格ミステリ大賞に輝く第五長編。
目次
絵図
はじめに
第一章 阿武隈川烏、水魑様を語る
第二章 祖父江偲、一つ目蔵を恐れる
第三章 記憶
第四章 帰郷
第五章 刀城言耶、波美の地を訪ねる
第六章 牢獄
第七章 秘密
第八章 鬼女
第九章 水使龍璽、怒髪天を衝く
第十章 神男、水魑様の儀に死す
第十一章 沈深湖、密室と化す
第十二章 一つ目蔵、正体を現す
第十三章 代替
第十四章 水魑様の花嫁、姿を消す
第十五章 神男連続殺人、遂に起こる
第十六章 囚人蔵、人質を呑む
第十七章 幽閉
第十八章 神男連続殺人、更に発生す
第十九章 刀城言耶、事件の解釈を試みる
第二十章 水魑様、全てを喰らう
終 章
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
nobby
141
刀城言耶シリーズ6作目は文庫750頁超の長編でサギリ再び!水魑という神がおます湖で雨乞いあるいは雨止めにむけて行われる儀に出向いた言耶が目にする不可解な死の連鎖…2人の視点変えての構成に翻弄されながらも、40頁前後の細かい章立てでの怒濤の展開は意外と一気に読める!何故に儀式中なのか、殺害方法や動機は何か、八方塞がりのまま例によって終盤で整理される疑問点は43+8。これでもかと自虐でひっくり返す解決はスゴ過ぎる!でもね…とにかく地の権力とやらを振りかざす龍璽という狂人に覚える憤怒たるや…それまさに「化物…」2022/08/03
W-G
128
カラス先輩と祖父江さんの存在のお陰で結構ライトな読み口ですが、長さを感じさせない面白さ。コレに登場するサギリさん、家系図のどこに位置することになるのだろう?頭が悪くて分からないので、分かる人いたら教えて下さい。凄く気になってます。前半が割りと退屈でしたが、事件がおきはじめてからは一気にスピード感が出てきます。中盤以降は他作品と比べても一番スリリングかな。トリックや真相はじゅうぶん面白かった。しかし、作品の毒というか、アクの強さが足りずに、なんとなく印象は弱いです。
勇波
101
久々のお馴染み二転三転小説堪能できました!け・け・け…。怪?!事件の導入部から偲ちゃんとの絡みが増えてテンポが良くなったように感じます。『厭魅』とか初期の作品のジットリ感は多少薄れてれるような気がしますが、全体を覆う不気味さはまだまだ健在。。「刀城シリーズ」随分読破してきたのでこのくらいの二転三転ではもはや驚けませぬ。さらなる「刀城言耶」が右往左往する物語を期待します★2016/08/13
ALATA
98
奈良の山奥で御神体に水をいただく水使、水内、水庭、水分の四社で起こる不連続殺人事件に刀城言耶が挑む。編集者の祖父江偲も雨乞いの儀式の最中に災難が…。水魑の神、一つ目蔵、水中洞窟と幽玄のごとき道具立てにページをめくる手は止まらない。沈深湖が巨大な密室となった十三年前の神男殺人事件から尾を引く推理、考察が万華鏡のようにあざやか。最初の事件が発生と同時に完結しているという謎解きに★4※鉄砲水で全壊した波美の地は復興へ動き出す。新しい胎動と村と社の再建に光明が見いだせる終章はホラーではちょっと珍しい。2023/04/04
ちょろこ
89
一番、横溝ワールドを感じられた一冊。山奥の村、雨乞いの儀式、陰鬱な村人の関係。馬車に揺られながら村の怪異を聞かされ村の地を踏む刀城言耶。と、シリーズの中で一番横溝ワールドに近い雰囲気を感じた。そしてお決まりの連続殺人事件は密室と化した湖に浮かぶ船。相変わらずのノートに記された疑問点をつぶしながら真相に導いていくのはわかりやすく面白い。そして二転三転、今回はおぞましさと共にせつなさいっぱいで転がされた気分。この霧に包まれたような終わり方、そっとしておきたい雰囲気がたまらなくいい。2018/06/17