内容説明
真夏の夜、寝床を捜して深夜の街を彷徨っていた啓太は、杉浦充という男と出会いセックスを条件に部屋に泊めてもらう。男と寝たい訳ではなかったが、啓太は自分のアパートに帰りたくなかった。大きな冷凍庫が唸る部屋で、独り夢を見たくなかったからだ。悪夢を抱えていた啓太にとって、泊めてくれる杉浦は都合のいい相手だった。しかし、杉浦の一途な想いに心が揺れるようになり…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
☆よいこ
74
BL。恋人を殺し遺体を冷凍庫に隠した内海啓太(うつみけいた)は悪夢にうなされアパートに帰ることができなくなった。夜の街を彷徨い、ゲイバーで出会った杉浦充(すぎうらみつる)の部屋へ転げ込む。殺人者という秘密に押しつぶされそうな啓太を、充は純粋な愛で支える。▽解説にもあるが、設定が異性愛であれば特筆されないだろうことがBLになるとそこだけが大きく注目されるのが残念。確かにBLだからこその人間描写もあるが、それ以上にこの物語のテーマはディスクレシアの少年の物語だった。読み書きがなんぼのもんじゃい。充はいい子だ。2018/10/08
友和
69
すごくよかった。とくに秘密Ⅲには感動しました。2014/09/25
papako
67
ディスレクシアの青年充と恋人を殺して冷凍庫に隠した大学生啓太の物語。かと思ったら、充を巡る物語でした。読み書きができないディスレクシア。しかし充の性質の良さはディスレクシアだからなのか?障害云々じゃないよね。ただただいい子。木原さんらしい怖いくらいの一途さの充。そしてSEXから始まる二人の恋愛。人が人を大切にする、生きていくのに必要な居場所とは?最初は啓太に違和感があったのに、最後は運命を信じさせられていました。充、家族に会えてよ!講談社木原作品の中では1番性描写が多かった気がする。2019/02/04
JUN+
65
サスペンスフルな側面があって、いったいこの先どんな展開が待ってるのやらと緊張しながら引き込まれて読んだら中盤で、そういえば序盤にちゃんと伏線があったわけかと気づいた。そしてタイトルにもなっている「秘密」。いろんな人のいろんな秘密が隠されている中、個人的には最後の最後で出てくる秘密に涙腺がようやく緩んだ。男同士の性描写があるだけでBL小説としてしまうのは、大事なものを気づかせにくくしてしまってもったいないといつも思う。特に木原作品は男同士の愛情以上に家族や人間心理を深く書いてるからなおさらだ。2014/01/14
miyu
60
妄想癖があり夢と現実の境を彷徨う啓太、ゲイである己を許容し愉しみながら誰も本気で愛せない榎本、欠けた物の自覚さえ出来ず錯覚した平静の中で生きる樹。それぞれがどこか欠落した部分を持て余す男達の視線で進む3章。だが疑いもなくこの物語の主人公はディスレクシアである充だ。周囲の目を通して語られる充という存在のなんと鮮やかなことか。唯一の砦であり理解者であるべき家族にまず捨てられる辛さ。苦しみと諦めの中で「誰かに愛されたい、誰かを愛したい」と無意識に思い続け、見つけた啓太の手を命がけで離そうとしない充の姿に泣けた。2018/05/13