内容説明
厳冬の北海道、消息を絶ったカメラマン捜索のため、若き森林保護官はスキーを履き、険しい山中へ向かう。カメラマンは無残な遺体で発見され、手負いの羆は銃殺され事件は一件落着したかに見えた。しかし、噛み跡はその羆のものより遙かに巨大だった。最強の野生動物「羆」との壮絶な死闘を描く、元自衛隊の、期待の大型新人による傑作山岳小説。
目次
プロローグ
一章 白い谷
二章 食害
三章 銃声
四章 タンデムベルト
五章 凶弾
六章 発火点
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
いつでも母さん
135
人間が一番強いと思っている者たちに読ませたい。冬の日高山脈、森林保護官は勝手に山を弄びしっぺ返しにあった者でも助けなければならない。仕事だからと言え憤りを感じてしまう。生と死を分かつのは天の采配か自然からの課題なのか?巨大な白い羆との追跡と壮絶な闘い。文庫で200頁ちょっとなのに自分が日高山脈に漂う冷たい空気と化して、また二人の森林保護官に、そして羆に同化した気分で読了した。山には、自然界には犯してはならないルールがあるのだ。だからなんとか動物も人間も生存していられる。間違うなよ人間と言われた気がする。2016/03/31
りゅう☆
98
冬山でカメラマンが殺された。森林保護官として捕獲要請を受けた孝也と上司の山崎。厳しい雪山、いつ羆が現れるか分からない恐怖。羆の聡明さに更に畏怖の念を抱く。でもなぜ冬眠してるはずの羆が人を襲うのか。そこにある人間の愚かさが情けない。そして鬼気迫る臨場感にページを捲る手が止まらない。しかしこんなシリアスな状況にほんのちょっぴりだけど淡い恋心も描かれていて「冷」ばかりでなく「温」を感じることもできた。森林保護官に関する物語はお初。森林保護官の三つの柱である「勇気、責任、勝利」を見事に見せてくれた。2016/09/11
Take@磨穿鉄靴
92
楽しい時間を過ごせた。山の中に身一つで入ると本当に人間て弱い存在だと思い知らされる。それでも山崎のようにロープを始めナイフや銃等の様々なサバイバルのスキルを体得し精神も鍛練すればそこに存在し続ける事が出来るんだろうなとも思った。例え銃を持っていても精神的甘さがあればそれは身体にも表れるしそうなればニンゲンも爬虫類の前に出されたピンクマウスと同様。自分は山で会うサルもイノシシもおっかなくてビビるピンクマウス。文明あってのいきりおじさんだと痛感。★★★☆☆2018/05/09
アッシュ姉
86
★★★熊谷達也さんのあとに読んだためか、物足りなさは否めないが、元自衛官ならではの知識や羆の習性など興味深かった。熊について知れば知るほど、人智を超えた存在に思えてしまう。享楽のために山を冒涜する行為をはたらいた人間に対し、山の神の化身として羆が現れたのだろうか。賢い熊と愚かな人間の対比が際立っていた。2016/06/22
つねじろう
81
何が怖いってやっぱり熊でしょそれもヒグマ。食べられちゃう恐怖感を出せる動物って滅多に居ない。そうバリバリムシャムシャと。おいちょとそんなトコから齧るの止めてくれるって言っても全然聞いてくれそうもないし爪も痛そうだし。ゔ〜やっぱり怖いわ〜そんなお話。ああだいたいこの手のお話は自然をないがしろにする人間がおって、その自然の怒りの象徴の羆が噛みつくみたいなやつでしょ?って言われちゃうと以上終わりなとこもあるけどこの作者の描写力と云うか筆力は耳元で羆が咆哮してる様で迫力満点。熱帯夜がバッチリ涼しくなりますよ。2015/08/14