内容説明
堂野崇文は痴漢と間違われて逮捕されるが、冤罪を訴え最高裁まで争ったため、実刑判決を受けてしまう。入れられた雑居房は、喜多川圭や芝、柿崎、三橋といった殺人や詐欺を犯した癖のある男たちと一緒で、堂野にはとうてい馴染めなかった。そんな中、「自分も冤罪だ」という三橋に堂野は心を開くようになるが…。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
❁かな❁
196
泣きました。BL界の芥川賞と謳われていたので気になっていた作品。純粋な愛の物語。痴漢の冤罪で逮捕された堂野は雑居房で喜多川と出逢う。『箱の中』では獄中での様子が丁寧に描かれる。愛を知らずに生きてきた喜多川の純粋無垢さにやられた。ただただ頭を撫でられたい時もある。少しずつ距離が縮まっていくのもいい。一途過ぎて激しい部分もあり重苦しい現実もある。続編のノベルス版『檻の外』より表題作掲載。出所後を描かれた『檻の外』で数回涙。「同じ雨の降っている場所にいるんだって思うぐらいいいだろ」純真な想いに胸が熱くなる。2018/02/03
ショースケ
193
読友さんのレビューを読んで興味を持った。凄まじかった…そして怖かった。冤罪で刑務所に入った堂野。そこで知り合った喜多川はある時から一方的に愛情を向けてくる。酷い生い立ちの彼を思いやるが愛情には応えられない。しかし喜多川からの獣のような愛情に屈してしまう。男ばかりの中ではそんなこともあるのかと思っていたが、刑期を終えて喜多川が探偵を使って堂野を執拗に探すところから、俄然面白くなってきた。しかしとんでもない事件が起きる。BLの範疇を超えて凄まじいミステリーだった。しかし堂野の妻が勝手過ぎるのには閉口した。2021/08/05
みっちゃん
176
目をごしごし擦りながら考える。何故私は泣いているのかと。最初の表題作はただただ痛々しい。この激しい愛着は、彼が1度も触れる事のなかった親への、友への愛情と性愛の衝動がごちゃ混ぜになっているのだと。次の章では涙目になりながら「もういいよ!止めなよ」と叫びたくなる。そして最後の「檻の外」で初めて気づく。獣のような愛情表現と、助言に耳を貸さない頑迷さに同居する無骨な優しさと誠実な人柄に。この一途すぎる「愛」が彼の生きる証なのだと。男同士とか、性愛描写とか二の次だよ、と思える心を揺さぶられる生き様がそこにはある。2021/03/26
hideko
162
初読み作家さん。 三部構成からなる長編。 痴漢の冤罪で実刑判決を受け収監された堂野。元来役所努めの真面目な性格であり、妹の縁談は破談になり、両親は地元を追われる。そんな状況でありムショ暮らしに慣れるどころかだんだん疲弊してゆく。 もう精神的にギリギリになって夜、寝床で泣いていると子供を宥めるよう頭を撫でる手が…それが喜多川だった。彼はとても無垢な男だった。次第に堂野に懐き愛を語るが堂野は受け入れることが出来ない。そして堂野は出所する。 2章目は出所後、喜多川は泣け無しの金で探偵を雇い堂野を探す。2017/10/11
ゆいまある
149
BLという先入観を捨てて読んでみてよかった。ラブシーンなのかレイプなのか微妙ではあるけど。冤罪で実刑となり、生きる希望を無くした男を、一途に愛してくれたもう一人の男。彼は愛を知らない。家庭を知らない。愛以外何も求めない。何も持たないもののただ一つの愛はこんなにも強い。愛の神エロスは死の神タナトスに勝つ。どんなに希望のない人生でも、愛するものがあれば人は生き延びられる。この一年余りにも疲れ過ぎて自分が何の為に生きているのか見失ってた。愛し方は思い出せないけど、生きる理由は思い出せたかもしれない。ありがとう。2021/05/16