内容説明
二年前、寒風吹きすさぶ冬の日、当時、警視庁捜査一課、霜月の妻と子が殺された。妻は凌辱を受け死体は凍りついていた。霜月は職を辞し、犯人を追跡したが、いまだ手がかりはつかめなかった。が、そのころから霜月の一族の子どもたちが何人も、不可解な死を遂げていた。何者かが霜月の一族を抹殺しようとする気配が感じられた。彼は自らの〈血〉の謎を明らかにするために、ルーツを遡りはじめる。が、浮かんできたのは呪われた〈血〉の恐るべき真実……。凄絶な暴力と性――時代を超えて展開する、バイオレンス・アクション!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
64
先日著者の短編「百年の追跡」を読んだが、それと「魔界」を足して長編まで膨らませたもの。無論単なる補筆ではなく主人公を追跡者から妻子を殺された復讐者へと変えた事で、より一層緊迫感を増す内容となっている。ただ短編もそうだったけど、現在では発表出来ない内容というか、現在の目から見ると妙な点も多い。遺伝についてもそうだけど、その因縁の始まりが単なるスワッピングだったりするのはどうかと。昔は衝撃的だったのかも知れないけど、現在だとある意味市民権を得ているからなあ。ただ本筋の部分、追いつ追われつは面白く読めました。2023/07/26
屋根裏部屋のふくろう🦉
7
西村寿行作品と35年ぶりに(Kindle版での)ご対面。作品が経年により色褪せるかと思えばどっこい、西村節は未だ滅することなく光っていた。作品が総じて短いセンテンスで織り成されているからか、(昔は気づかなかったことだが)何とも言えぬ品のようなものを感じる。人妻が複数の男にねっちり犯され声を上げるシーンは西村寿行作品に流れる必殺パターンであり本作品でも相変わらず光を放っている。黒い血の連鎖が犯罪を生んできたという着眼も興味深い。2018/10/04
さんつきくん
6
40年くらい前の小説。半分はエロ小説だった。その感想をつらつら書いていたのでは、このレビューは女性のユーザーさんに読まれないと思うので、これぐらいにしよう。物語は妻子を殺され、犯人を追う警察官で主人公の霜月が、この事件を機に警察を辞め、独自で捜査することになった。そこで掴んだ真実はある血筋の人物が連続で殺されていることだった。そこで、この血筋の過去を調べたことで、複雑な血の流れを辿る一族がいることを知る。江戸時代まで遡るので、複雑な家系図を見ることになる。何故、妻子は殺されてしまったのか、犯人は何者なのか2021/09/23
冬佳彰
4
昔、読了したとき、これは問題のある小説だと思った。ネタバレになるので言わないが、まあ優生学を過信した暗殺を地で行くような小説だった。もちろん、それを肯定しているのでもなく、しかし、そうした状況に立たされた時、主人公はどうする?という、なんだかやるせない話であった。これもまた異形の物語だと言えるだろう。
つちのこ
1
角川文庫版。1984年頃読了