内容説明
三月十一日、専業主婦の葉子は友人の結婚披露宴のため仙台にいたところ、地震に見舞われた。東京に戻れずホテルに滞在するうち、花嫁の行方不明、津波被害、原発問題など様々な情報を知る。少し気になるのは、東京にいる夫と連絡が取りづらいことだった――。ささやかな日常の中、「あの日」を迎えた全ての人に小さな力を贈る、感動の長篇小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
gonta19
112
2012/2/10 Amazonより届く。 2025/4/2〜4/3 3年ぶりの矢口作品。(ここのところ三年ほど開いてしまった作家さんの作品を集中的に読んでいる) 大学時代の友人の結婚式に出席するために仙台にいた葉子は、東日本大震災に被災してしまう。結婚する友人が行方不明な中、津波や原発の情報が断片的に入ってくる。東京にいる浮気が疑われる夫とはほとんど連絡が取れないまま、不安な時を過ごす。 2025/04/03
あつひめ
59
他の読者同様「あの日」を思い出した。人の数だけ歯車が違ったり、またすれ違っていた思いが一つになったりいろいろだったことだろう。様々な文明の利器が発達して、いつでもどこでも誰とでも繋がることができることに安心しきっていた現代人にとって携帯も電気も使えない暮らしはどん底。それが物語の中だけでなく現実だったことに恐怖を覚える。被災地のど真ん中に居ながら情報がなかなか伝わらないことも不安の一つだったと思う。震災に絡めながらの恋愛物語は、少しこの場にはふさわしく無い気もしたが、人生にはいろいろあるっていうことかな。2013/01/12
ぶんこ
47
友人の結婚式のために仙台へ行き、震災に遭遇。こういった設定は当日あったかもしれません。そう思わせはしますが、小説にするかな?夫の真一さんが連絡を取ってこないことよりも、夫に心配かけてはと自分から連絡しない葉子さんの態度に違和感。お互い様のような結末。それに震災をからませないで欲しかった。2019/09/09
モモ
46
東日本大震災の直前に大学時代の友人の結婚式のため仙台市を訪れた葉子。友人と連絡が取れず、なぜか東京にいる夫とも連絡が取れない。高台にある中学校から母親を探しに家に戻った少年。認知症の父を追いかけて海辺に近づいた男性。それぞれの、あの日がある。結婚・離婚などは平常時よりも早い展開で進むのだろうか。もう少しで、あの日から9年。あの日に失われた命、自然に思いをはせた。2020/03/05
penguin-blue
37
友人の結婚式のために仙台にいて東日本大震災に行き合わせた主婦の葉子とその周りの人々を中心に、被災地の人々のエピソードを絡めた物語。もう、とにかく主人公が身勝手で底が浅く全然共感出来なかった。というか、他に感情移入できる人も出てこず、かといって人の負の面を書くことで何かを伝えたいのだとも思えない。震災に関しては報道や実際に聞いた話で重たい、強い印象を残すものが多かったこともあって余計陳腐に見えるのかもしれないが、小説だからこそできる伝え方もあると思うのだけれど。作者が何を書きたかったのか全然わからなかった。2017/04/26