内容説明
大阪府警が犯した「ネコババ事件」の全貌を追う。拾って交番に届けた15万円が消えていた。届けた主婦を組織ぐるみで犯人にデッチあげようとする警察側。ぬれぎぬに泣く身重の主婦。真相を求めて執念の追跡がはじまる。警察権力の冤罪体質をつき、衝撃と戦慄の過程を明るみに出した日本新聞協会賞受賞作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
うえぴー
15
誰にでも起こりうる冤罪の怖さと、巨悪に立ち向かう一般人の強さを丁寧に描いたドキュメント。善意から派出所に届けた現金が消えた? 主婦は届けたと言っており、警察は届いていないと言う。大阪府警の組織ぐるみの隠蔽を、読売新聞が連載という形で暴いていったものを単行本化。一人の警官のちょっとした出来心が、身内をかばう組織の体質によって、何と善意の届け出人を犯人に仕立てあげてしまうという愚挙に発展。身重であった主婦は周囲の協力を得て大阪府警を告発し、裁判では異例の警察側「認諾」(全面敗訴)を勝ち取る。2016/06/29
nobody
6
闇の深奥は何も解明されてないどころか、決定的なミスリードをしている。それは警察への配慮である。新聞記者も主婦側弁護士も曇りない真実主義者ではないし、主婦にすら全面的に感情移入はできない。一連の犯行(逮捕監禁未遂罪、証拠偽造罪。主犯谷口寿一堺南署副署長・馬場博警ら課長、従犯井上正雄署長。西村含め一切逮捕勾留すらなし。大阪府警本部も共同共謀正犯)は西村正博巡査がネコババ濡衣着せの真犯人であることを知った上でのことだったのか、が核心である。でっちあげ実行犯たる岡田広満「部長刑事」は「主婦をクロとする決定的な話」2024/03/14
ひとまろ
5
拾得物として届け出た15万円をネコババした警察に 届け出た人がネコババしたと濡れ衣を着せられた 主婦の闘いを描いた事件ノンフィクション。2016/01/29
T
2
怒りと恐怖で読む手が止まらなかった。数時間で全部読んだ。2015/04/22
Ikuto Nagura
1
1988年の大阪府警堺南署による<拾得金警官ネコババ・届け出主婦犯人扱い>事件のドキュメント。四大死刑冤罪事件や袴田事件、足利事件など、いくつかの著名な冤罪事件について関連書籍を読んだが、構図としてはこの事件が最も悪質。確かに、警察官の中にも悪さをする者もいるんだろう。だけど、不良警官を守り不祥事を隠蔽するために、警察署という組織を挙げて一市民を犯罪者に仕立てるなんて、とても現実とは思えない。そして、10章で読売新聞記者が自省する警察とマスコミの蜜月関係は、四半世紀の歳月を経て、何か変化をしたのだろうか。2016/02/18