内容説明
日本は諸外国とくらべて地名が膨大であると説き、柳田は有名な「大きな地名」よりも、小字などの「小さな地名」に着目する。また、地名を新古の生活の必要によって命名する「利用地名」、自分の土地だと宣言するための「占有地名」、地名を分割して名付ける「分割地名」に分類。それぞれの特徴は何か。地名学の源流となった名著。(解説・中沢新一)(講談社学術文庫)
目次
自 序
地名の話
地名と地理
地名と歴史
地名考説
解説 地名のアースダイバー──中沢新一
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
獺祭魚の食客@鯨鯢
44
地名にはその地の神「地霊」がその土地を守っている。天皇家の氏神「神明社」は「伊勢神宮」の分社であり、古事記とは天皇家の王化の物語である。 地元川崎にもいくつものその痕跡が残されている。 「加瀬」は「賀勢」即ち「伊勢を賀(いわ)う」であり、天皇家の直轄地である屯倉「橘花」があった。倭建命の后弟橘媛(オトタチバナヒメ)とも関係する。 「宮内」は藤原氏の「春日神社」の勢力圏内としてそう呼ばれた。「鹿島田」は「鹿島の田」の意であり鹿島神宮との繋がりで藤原氏と関係している。どちらにも藤原家の荘園があった。2021/12/08
魚京童!
14
國男だからいいんだよね。難しい問題しかないよね。歴史は勝者のものだから、弱者は地名に名前を遺す。そして連綿と引き続く。核戦争するしかない。2022/03/09
roughfractus02
9
地名の由来を辿れる条件を平和な期間(他言語を用いる民族支配がない)が長く続き、旧住民と今の住民の間にも大きな争いもない場合として研究を進める著者は、日本の地名の由来を漢語を充てる以前の音自身に求める。海外より分量が多く頻繁に変化する日本の地名だが、東西南北の一致があり通則(地名を住居者に名づける傾向等)が明確という性質を見出す著者は、各地の地理と歴史の条件からその由来を推測する(アイヌ語の明瞭な名付けの例等)。著者の生地播磨神崎郡香呂村は、岩の黒々とした土地をゴウロと呼ぶ人々の伝承からその由来を推測する。2025/02/24
こけこ
3
読みにくかった。80年くらい前の研究の賜物はすごい。地名の変更は合併などでかなり変わっているにしても、元々の由来がわかると楽しい。2024/07/26
じぇにぃ
2
慣れない文体でなかなか読むのに苦労した…。特徴的な地形や要素があるだけでなく、そこに地名をつける必要性があって初めて地名になる、という考え方がまず頭になかったのでなるほどと思った。歴史にするとは忘却に抗うことなんだなとふと思った。2022/03/12