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内容説明
深く考えてみるまでもなく、音声と概念とはまったく性質が違うものです。音声は波ですから見たり触ったりすることはできないにしても、とにかく物理的な実体であるのに対し、概念は決して物理的な実体とは言えません。それなのに、私たち人間がコトバを使う時には、その似ても似つかない2つのものを対応させています。しかも、その対応のさせ方は、同じ言語を使う人々であればまったく同じなのです。もちろんだからこそコトバを使って意味の伝達ができるようになっているのですが、これほど性質の異なる2つの要素を、同じ言語を使う人々がどうして正しく結びつけることができるのかは、考えてみれば不思議なことです。――〈本書より〉 (講談社現代新書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
(C17H26O4)
78
ソシュールとソシュール以降の著名な学者の学説の紹介と説明。それから、仮説をもとにした検証ではなく、実際の言語において客観的に観察される事実をもとに、体系や構造を論理的に解明し説明するという構造主義言語学の分析手法がこれからも取られるべきだ、という著者の願いと主張。少々しつこいところもあったれけど、学説についてはかなり噛み砕いて書かれていて読みやすかった。構造主義言語学の流れを懐かしくおさらい(いや、ほぼ忘れてるからおさらいとは言わないか)した。副題の『コトバはなぜ通じるのか』というのはどうかなあ。2021/03/06
esop
68
ソシュールの偉大なところー比較言語学の方法に十分に熟達し、具体的な言語事実を客観的に処理する姿勢を身につけた上で改めてコトバの普遍性の解明に挑戦しようとしたこと/音声から意味へ、そして意味から音声へという対応関係を決定するメカニズムの解明こそがコトバの本質を見極めること/ラングとパロールを合わせた個別言語の全体像がランガージュ/音や図形などの人間が知覚できる表象に意味が結びついたものを記号/コトバの要素が作る体系に基づいて要素の価値が決定される/言語記号の恣意性、言語記号の線状性2024/12/10
佐島楓
44
言語学の参考書として読んだ。ソシュールの学説がかなり整理された形で書かれており、勉強に役立った。2015/11/15
おはち
18
本来言語記号の表示部(音)と内容部(意味されるもの)の間には関係がないという「恣意性」と、言語は線的に順番をもって発話されるという「線状性」を公理としたそれ自体が素晴らしく、言われてみれば当たり前と思えることを前提に据えるのが学問の始まりだと再認識しました。後継者たちについてはマルチネの「経済性」は重要な指摘だと思いますが、現在の言語自体に欠陥がある以上、傾向としか言えなそうです。そもそも単語に恣意性を認めるならば、文の構造(配置)についても恣意性があるのだから、統一的な説明は難しいのでは、と思ったり……2021/08/21
やまやま
17
ソシュールの考え方の概説の後、4つの継承論を展開。プラハ学派による音素への取り組みでは、異なった音声が音素としても同じか否かという議論に始まり、音素を設定する方法の解明を狙うアメリカ構造主義言語学に連なる。コペンハーゲン学派の言葉の関係性に注目した議論に評価が高い。バンベニストに代表される構造主義的分析手法については、時制や態のフラットな比較が紹介され、理解しやすい。マルチネの語る機能主義は、コトバにみられる経済性ということで、これもわかりやすい例。なぜ文に構造が必要か、に戻る。 2019/07/06