内容説明
「女が乗っているぞ!」その声が上空を旋回する11機の特攻機まで届くことはなかった。白いワンピース姿の女性を乗せた機体を操縦していたのは谷藤徹夫少尉(当時22歳)、女性は妻の朝子(当時24歳)だった。1945年8月19日、満州。20代の青年将校たちは、ある者は許嫁の自決を見届け、ある者は恋人を連れ、そして谷藤徹夫は妻を乗せ、空に消えていった。「妻と飛んだ特攻兵」、その衝撃の事実を追った歴史ドキュメント!!!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
yoshida
102
昭和20年8月19日、満州、大虎山飛行場。「神州不滅特別攻撃隊」11機は最後の特攻に向かった。そこには2名の女性が一緒であった。在満避難民がソ連軍に虐殺される葛根廟の惨劇を見た加藤准尉を中心に、彼等は武装解除から特攻を選ぶ。満州を舞台にした戦記物では、やはり関東軍幹部が開拓民や兵士を棄民した事が忘れられない。将校の家族は優先的に避難することが出来た。それでも相当の苦難はあったと思う。しかし、開拓団の悲劇やシベリア抑留とは比較にならない。勿論、ソ連の国際法違犯が最大の悪である。戦記物は読み継がねばならない。2015/06/10
扉のこちら側
65
初読。2015年926冊め。読む前は「残してきた妻と心をひとつにして」的な「精神的」に「妻と飛んだ」話かと思っていたが、本当に特攻機に夫婦で搭乗したということに驚き。関東軍が民間人を見捨てて逃亡した満州で、ソ連軍により生き地獄にさらされる日本人居留民。降伏命令に背いて、唯一可能な特攻という手段でソ連軍に立ち向かった10名の飛行兵。敵軍から辱めを負うくらいならと夫とともに特攻した妻。副題に「最後の特攻」とある通り、終戦後の8月19日のことであるし特攻は賛美したくないけれど、書かれている満州の惨状では 続 2015/08/02
黒瀬
47
「女が乗っているぞ!」 白いワンピース姿の若い女性を乗せた機体を操縦していたのは22歳の谷藤少尉、女性はその妻、朝子24歳。ある者は許婚の自決を見届け、ある者は恋人を連れ、そして谷藤少尉は妻を乗せて特攻出撃を行った。 よくもまぁ、ここまで取材が出来たものだと舌を巻く情報量。搭乗員やその家族だけでなく、当時の満州についても深堀りされており、歴史書としても一見の価値あり。非公式のこの作戦が行われたのは昭和20年8月19日のためか、多くの日本人がこの事実を知らない。愛する者と共に散るか、一人遺される道を選ぶか。
佳乃
39
終戦直後の満州「神州不滅特別攻撃隊」の話。そして、その特攻機には女が乗っていた・・・そこには、何故妻と共に特攻したのかがわかるまでの基軸が語られている。特攻機は女を乗せるものではないし、ましてこの特攻は軍の命に背いての物だったので特攻としても認めては貰えていなかった「幻の特攻隊」とされていた。それが戦友たちの働きかけで慰霊碑まで出来、その慰霊碑にはその特攻で命をささげた者たちすべての名が刻まれている。その方たちは「世田谷山観音寺」で魂が眠っています。『彼らこそ男の中の男、夫婦での特攻は究極の愛の証し』2015/05/03
金吾
30
谷藤少尉の話は深い絶望感と焦燥に包まれる壮絶な話です。また関東軍が邦人を見捨てて逃げ出したのは卑怯であり、恥ずべき歴史だと思います。2025/03/31
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