内容説明
ボードレール、ランボー、バタイユ、ソシュールなどのテクストを媒介に繰り広げられる文学・言語論であり、かつ他者論。現代の文学が問題にする実存の特異性、そして「経験」の固有性を論じ、言葉にたいする通念を疑い、未知なる他者とのコミュニケーションのあやうさを解き明かす。
目次
第1章 文学における方向転換
第2章 〈書くこと〉の探求
第3章 言葉への問い
第4章 他者関係への現象学的アプローチ
第5章 他者に関わる志向性は間接的に作用すること
第6章 他者の呼びかけと〈言語的なもの〉
第7章 他者の特異性に関わろうとする言葉
第8章 愛の関係という他者関係
第9章 〈他者との関係〉は絶えず反復的に生きられることについて
[付論]死者の他者性を尊重するために
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
きつね
4
冒頭はボードレール、ランボー、プルーストなどのテクストにふれつつ「ことば」の他者性について議論しており具体性があって大変面白い。中盤からテクストの引用が減り、哲学書の噛み砕いた祖述になってしまうのが残念。ほとんど同じ論旨を辿り直す部分なども手伝って、どんな他者性について語っているのかがどんどんぼやけていくように感じる。現象学ふうの他者論を噛ませることで、バタイユやランボーの過剰さが脱色されているあたりは、狙いなのかどうなのか。2014/06/23
zom
1
本論は繰り返しが多く少し冗長な感じだが、比較的平易な言葉で書いてある。ブランショ理解に役立った。2013/05/18
takizawa
1
他者が眼の前にいないとき,他者のことをあれこれ思い浮かべて想像したり,心の中で他者を思念することで,他者を理解しようとする。このとき,明示・黙示を問わず,「言葉」が媒介になっているのは間違いない。ただしここでいう「言葉」には,初めから存在するものを語る力だけではなく,自分の想像を超えた他者を語る力が含まれている。そして,他者の特異性とは,私が近づくたびに秘密を残すものだから,言葉が特異性へ向かう運動は永遠回帰的に反復される。2009/11/19