内容説明
泥棒長屋に流れ着いた老婆の悲しみが、出世にとことん無欲だった若き慶次郎の思いと交わる表題作「あした」。無精な夫を捨てた、髪結い妻の思わぬ本音を描く「春惜しむ」。内緒の逢瀬を重ねてはらんだ娘が、未来ある思い人を必死に庇う「むこうみず」など、円熟の筆致が香り立つ江戸の哀歓十景。慶次郎への尽きぬ思いを語る、生前最後の著者談話も収録した、人気シリーズ第13弾!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ふう
60
帯の言葉どおり、本当にただ小さな幸せを願って生きる人々の物語。その小さな幸せでさえ、手にすることがどんなに大変か…。誰かを憎んだり貶めたりして得たものは、とても幸せとは呼べない儚いもの。 貧しくても裏切られても、相手をいつくしむ気持ちがあれば、今日より少しは幸せな「あした」が来るような気がします。慶次郎の、罪を犯す前の人に会いたい、話を聞いて知恵を出し合えば罪を犯させずにすむかもしれないという思いが、晃之助や周りの人たちにも受け継がれ、読んでいるわたしも「あした」がいい日であるように思えてきます。2014/10/31
ナツメッグ☆
8
大事に大事に惜しみ惜しみページを括りました。「北原亞以子」ワールド燦然と輝く、慶次郎いいなぁー。「どんぐり」、「古着屋」がいい。なかでも「吾妻橋」は秀逸。2014/11/12
4fdo4
7
元 定町廻り同心 森口慶次郎が主人公の時代小説の13冊目。 市井が中心とした味わい深い人情噺は 北原亞以子の渾身の1冊だと思う。 どうしてもドラマの役者の顔がチラチラ頭に浮かんでしまうが、 やっぱりチャンバラ物より、じっくり読める市井物が好きである。2017/07/08
Kira
5
第十三集。巻末の作者インタビューを読んで初めて知ったのだが、作者は2010年から一年ほど大病を患っておられた。逝去されたのが2013年だから、復帰後の創作活動は長くはなかったようである。これほど味わい深い作品を書く北原氏の新作をもはや読むことができないのは、まことに残念。本屋の棚から北原氏の本は消えていくばかりである。この巻には、これまでのものと何かがちがうと思わせる作品がいくつかある。晃之助はますます慶次郎に似てきて、与力への昇進も辞退し、同心として市井の人たちの身近にかかわるのが楽しいと感じている。 2020/02/13
ひろたけ
2
☆42018/02/07