内容説明
精神科診断は、DSMというマニュアルに頼るのではなく「症状をじっくりと観察する」ことが第一である。
当たり前のことだが、それが忘れ去られようとしている。
「病名を付ければよい、そして、それに基づいて薬を処方すればよい」という風潮が強まったのは、DSM-IIIが導入されてからだ、と批判的に言う人がいるが、著者はそうではない、と考える。
そこには現代精神医学が抱える問題がある。
DSM-IIIが「必要」になった背景とその後の展開、そして、DSM-5の作成をめぐっての「批判」を紹介しながら、著者の精神医療論を語る。
目次
序文:第18代目中村勘三郎の体験
第1部 DSM-IIIはなぜ必要とされたか
治療のための診断とは
診断の不一致
医療保険と精神科医療
精神医学の医学化とDSM-III
信頼性の向上と多軸診断
DSM-IVの登場
第2部 DSMと過剰診断・過剰治療
過剰診断・過剰治療
Disorderの訳語をめぐる議論
うつ病の多様化が意味すること
新型うつ病にみる問題
双極II型障害
双極性障害および関連障害群
性機能障害と予防拘禁
第3部 DSM-5の失敗が教えること
DSM-5の概要とDSM-IVからの変更点
DSM-5が目指したパラダイム・シフトと挫折
DSMの秘密主義
DSMと経済問題
DMDDと小児の双極性障害
生物学的な指標の導入
RDoC
ディメンションかカテゴリーか
予防概念導入のための必要条件
臨床家の判断への回帰
死別反応は病気か
DSM-5と症例の概念化
治療関係の基礎を作る診断面接
第4部 今後の精神医療への展望
こころの健康を実現する環境
薬に頼らない治療を考えるとは?
裁判に負けた名門の精神療法専門病院Chestnut Lodge
地域との連携の重要性
宮城県女川町での実践とその後の広がり
ほか
感想・レビュー
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