内容説明
笑って泣いて怒って再び笑う――旅は恋とよく似ている
母を亡くした美雨は「台湾の三人のおじさん」を探しに台北に。彼らは母のかつての恋人か、それとも…三都の旅をめぐる女たちの物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
398
台湾の田舎町、北京、上海とそれぞれに趣の違う街をめぐる3つの短篇を収録。いずれも異文化との遭遇をテーマに語られる。よく言えば軽快、やや軽すぎるような気もする作品集。もう少しビターな要素が欲しいところ。3篇のうち「北京の春の白い服」は、著者自身がかつて実際に北京でファッション誌の編集をしていて、その経験に基づくものらしい。たしかにリアリティは十分だ。小説としては最後の「時間の向こうの一週間」がすぐれていると思うが、終幕の種明かしめいたくだりは余計かと思う。天空にポッカリと浮かんだ1週間でよかっただろう。2020/10/14
ミカママ
293
それぞれ女性主人公が、台湾、北京そして上海を旅して触れる、現地の空気やお料理...といえば、つまらないはずもなく。台湾人男性をして、日本人をチクリと刺したひとことは重かったなぁ。アメリカで教育実習生として過ごしたことのある中島さんのフィルターも感じることのできる作品でした。2017/04/19
ゴンゾウ@新潮部
131
台湾、北京、上海を旅した女性達の短編集。 旅の目的と訪れる都市がマッチしていて都市の雰囲気がとても良く描かれている。そこに住む人々の生活しる姿が目に浮かぶようだった。こういう作品に出会うとのろのろ歩いて旅をしたくなる。2017/09/21
いたろう
62
台湾、北京、上海を舞台にした、日本人女性が主人公の3編の中編小説。のろのろ歩けとは、2編めの「北京の春の白い服」に登場する屋台のおじさんが言った、さよならを意味する言葉「慢慢走」<マンマンゾウ>の直訳。どこかユーモラスで印象深い言葉。亡き母がかつて過ごした台湾を訪れた女性、ファッション誌創刊のため北京に出張してきた女性編集者、夫の転勤で上海にやって来た女性、それぞれが現地で出会った男性たち、そして、彼らが案内する街。10年以上違う北京の話と上海の話で、実は人物が繋がっているのではと気づいて、思わずニヤリ。2019/12/27
shizuka
62
初中島さん。文体がドライでとても読みやすかった。舞台は台湾、北京、上海。北京編での一文。「さよならの代わりに「慢慢走」って言うんだよ、まあ、ゆっくり行けよって感じかな」とてもいい言葉だなあと心底思った。お別れの時、「ゆっくり行ってね」ってとても優しくてなんとも温かい。よし早速使ってみようと中国人男子に得意げに「慢慢走」と言ったら、まずきょとん、とされ、続いて「慢走」か、と言われ、「それとても古い言葉。もう使わない」と一蹴。儚く終了。現代語じゃないかもしれないけどさ、わたしは使おう。だって美しいんだもん!2017/03/20