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内容説明
「……ああ,美しさに気味が悪い」(「十和田湖」).湯の町修善寺・飯坂温泉,猪苗代に京大阪,暮らした逗子になじみの深川.食べもの乗りもの,唄に鳥.旅は道づれ弥次喜多道中,明治大正昭和をかけて,鏡花と旅する十六篇.小説では見えない鏡花の姿に出会える,新編集の紀行文集.現代の読者のために詳細な注を付す.
目次
目 次
城の石垣
手帳四五枚
道中一枚絵 その一
左の窓
日記の端
一銚子
大阪まで
飯坂ゆき
玉造日記
城崎を憶う
麻を刈る
深川浅景
十和田湖
啄木鳥
鳥影
木菟俗見
解 説
注
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
HANA
50
北は十和田湖、西は京阪神岡本まで、鏡花がこれほど旅をしているとは思わなかったし、これほど数多くの紀行文を残しているとは思わなかった。それにしても京の一夜にしても奥入瀬の道行にしても、鏡花独特の文体で書かれると、同じ地平の上にあるのではなくどこか別世界の旅を見ているような趣も感じられる。特に十和田、奥入瀬の珠を連ねたような巧緻を極めた文章が……特に。名所をただ書き連ね案内するのではなく、同行者や旅先で会った人との人間関係が多く書かれているのも鏡花らしいのかなあ。ともあれ凡百の旅行記とは全然違う一冊であった。2014/03/27
KAZOO
47
鏡花にしては珍しい作品であると感じました。結構旅がすきだったようです。自分の住んでいた逗子(明治時代は東京から逗子まで3時間だそうです)のことも書かれているし、大船駅のサンドイッチが当時からあったなんて知りませんでした。また潔癖症なので、汽車の中で煮炊きをしたことなどもかかれています。解説がしっかりしていて読んでいて楽しくなりました。2014/10/27
kiho
12
ちょっと難しく感じる文体…でも正直な旅人の心が伝わってくる感じ♪2014/12/31
シンドバッド
8
泉鏡花の紀行文も良いのだが、田中励儀の解説が絶品!紀行文と鏡花の小説、交友など興味が尽きない。2014/02/02
李孟鑑
6
鏡花の紀行文集って珍しいと思ったら、きちんとまとまって出版されるのはこの本が初めてだとか。鏡花の小説は、幻想と覚醒を繰り返しながら彼岸へ流されて行くようなスタイルを持っていますが、それは紀行文になっても変わりません。あの独特の感覚は、作風というよりも鏡花の内面世界を写し取ったものなんですね。幻想的な文体のまま、ときどき笑いが挟まれるのも微笑ましく、泉鏡花という作家が身近に感じられます。巻末の解説に、各旅行から生まれた作品が紹介されているのもうれしいです。2015/06/28