内容説明
「ムーミンたちが本当はどのような生き物で、彼らの住む谷はどのような場所なのか、その答えはアニメは言うまでもなく、原作、絵本、いずれにおいても一切語られていません。もしかすると、私たちは今まで肝腎な問題を見落としたまま、アニメを見ていたのではないでしょうか。」(第一章より)
「原作をめぐっては、これまでも冨原眞弓さんをはじめ、多くの研究書や関連本が出版されてきました。しかし、ムーミンの世界は、読者それぞれが受け取ってくれればよいので、あえて趣旨を語らないという著者トーベ・ヤンソンの意向があり、その意向を尊重する研究者の配慮がなされてきました。そのため、あらすじをたどる表面的な指摘に止まるものが多く、原作の内容に踏み込んだ読解は、いまだに充分とは言えません。それでは、アニメの平穏な世界だけが記憶され、原作のユートピアは理解されず、あまりに勿体ないのではないか、と私は思うのです。〔…〕今回、私はみなさんに原作(児童文学)を読み解くことで「(原作の)再生後のユートピア」をお伝えし、さらに「(アニメの)省略されたユートピア」に隠された本当の魅力を知ってもらいたいと思い、文章にまとめてみました。」(まえがきより)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
へくとぱすかる
44
驚くのは、もちろんムーミンとは何者であるかということ。きちんと説明をされても、「そうは言うけれど……」と、残るものが。アニメしか知らない人が実はほとんどだろうが、やはり原作を読んでみないといけないな。オビにあるように、「アニメは原作の後日談」というのは当たっていると思う。ムーミンが北欧のフィンランドという土地と自然から生まれてきたことが心から納得できた。2017/04/05
Yu。
21
ヤンソンの生まれ育った北欧独特の厳しい気候や当時の時代背景、そして彼女が社会風刺画家というのを前提に踏まえていないとなかなか原作やコミックの『ムーミン』を理解出来ない。。そこを原作の陰(冬場)と陽(夏場)の物語とで大きく分け、その理由を事細かく解いていく(ムーミン愛がハンパない本書の著者による)解読本。一度 原作・コミック・アニメ(平成版)を全部通してから改てこれを読み直したなら真のムーミンファンになれる気がする(๑¯ω¯๑)2016/12/18
鳩羽
13
二つのアニメ、コミック、そして原作の児童文学とあるムーミンだが、アニメと原作ではキャラクターやその性格に違いがある。それを原作の後半で起こった、ムーミン達夏の世界と、見えない存在である冬の世界との境界が混じってしまった危機から、読み解いていく一考察。孤児がほとんどのムーミン谷のメンバーが、自然の脅威と、他者との付き合い方からそのユートピアの喪失の危機を迎え、それを乗り越えた後の再生後のユートピアを描いたのがアニメではないかというのに納得。あとムーミンママとモランの対の関係性も、神話の型を感じさせて面白い。2014/06/10
羽
11
☆☆☆☆☆ サブタイトルは「孤児たちの避難所」…ん?孤児たち?思わず手に取りました。本書では児童文学(原作)に焦点を当て、知られざるムーミン谷の秘密を暴いていきます。普通に原作やアニメを見ていたら気付かない、隠された裏側のストーリーがあるのです。読み終わると、ムーミン谷の仲間たちをより一層好きになっていました。2015/01/22
こだま
9
ムーミンの解説本。原作やアニメに触れたことがないので、これから読もうと思いました。2019/03/07