内容説明
女あり、玉のごとし――その女人は、滑らかな手触りのいにしえの玉の燭台が乗り移ったかのような肌体の、穏やかで艶のある人妻だった。男は何年待っても、その女人を妻にしたいと願ったが……人を愛することの至上の喜びと、別離の悲しみを描く表題作。ほかに、女の真の美しさをひきだし、いつくしむ天与の指をもつ男の生涯を描いた作品など、はかなくせつなく幻想的な六篇の恋物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
新地学@児童書病発動中
112
今月2冊の宮城谷さんの短編集を読んで、宮城谷さんは長編だけではなく、短編の名手でもあることが分かった。本書に収録された短編は男女の恋愛をテーマにしたものが多い。いずれの小説も端正で、情感あふれる文章が素晴らしい。上品なエロティシズムが行間からこぼれ落ちてくる｢指｣、短編ながら長編を凝縮した内容を持ち、ヒロイン小娥の壮絶な人生が心に残る｢歳月｣が私のベスト。2015/02/28
KAZOO
51
宮城谷さんもこのような、女性を主人公にした恋愛小説のようなミステリーのような短篇小説を書いておられたとは思いませんでした。私は宮部みゆきさんほどにはミステリー(作品ごとにシャーロック・ホームズとかポーとか言っておられます）とは思いませんでしたが、謎めいたところがやはり中国的な歴史小説に合うのかなあという気はしました。2015/03/17
巨峰
24
宮城谷昌光が描く古代中国の美女たち。ただ、この小説の描く女性たちは、男目線での美しさ素敵さ都合のよさな気がするな。その中で例外的には「歳月」の女性は自分の意思で進もうとするのが素晴らしい。2012/07/25
星落秋風五丈原
15
男が出会ったその女人は滑らかな手ざわりの玉の燭台が乗り移ったかのような人妻だった。中国古代短編6編。著者の小説世界の奥行きの深さを示す珠玉の中国古代短篇六篇。人生の豊かさとはかなさ、男と女の生の艶やかさと不思議さを描く。2002/08/25
キムチ２７
7
昔好きだった中国古典の世界。北方ワールドは堪能したが、この筆者モノは長編が多く敷居が高かった。表紙に心惹かれ手にしたけど、何れも短編、取りつき易い。 何れの話も構成が際立ち、その世界へ飛翔できる。 時には司馬遷が、項羽が、孔子が加わりヘェ～と云う面白さ。 性の描写が圧巻でエロティズムもかくなれば、何んと美しい事か！ ヒロインたる女性は何れも非現実的で、表装されたかの如き存在だが男どもが笑わせる。余りの都合よさ。まるで男の本能究極願望というか・・ 牛君が特に印象強く、ある意味怖かった。2013/01/06
