内容説明
著者の処女長篇にして本格ミステリの古典的傑作
別々の場所で起きた四つの不可思議な謎が互いにからみ合い、やがて驚愕のトリックと意外な真相が明らかになる。名作待望の復刊!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
KAZOO
48
やはり私にとっては何度読んでも素晴らしい、のことばしか出てこない傑作であると思います。雑誌「幻影城」で短篇を書いていて、その後初めて書いた長編であるので、氏の力の入れ具合がわかるような気がします。ただ本当に注意して読まないとなぜだろうと思うことしきりになると思います。2015/02/14
かんらんしゃ🎡
42
★序章の5つのエピソードで一気に引き込まれた。誰が生きているやら死んでいるやら、誰が狂っているのかいないのか。それぞれの人物視点で描かれるので彼らは皆、正常であり生きていると思い込んでいる。だから読む側の基点が揺らいでますます謎めく。後半謎解きはややこしい。錯綜と狂気の中で朧げにしか掴めなかった。★この話は、誰か女性一人に視点を絞れば、連城らしい情念と艶っぽさが浮き出たと思われる。それを短編で読みたい。2020/11/03
ペーパーピーポー
33
とっ散らかった伏線を力技で無理矢理に締める作品を時々見掛けるが、この作品は、その中でも突出している。 まさに力技・オブ・力技! 並の作家なら、途中まで書いた段階で反省して書き直してるんじゃないかと思うが、キッチリと脱稿しちゃうんだから、恐れ入る。 リアリティとか言い出しちゃう人は、この作品は読まないほうがいい。2019/01/31
hit4papa
25
夫と逢引をする自分自身を目撃した主婦、トラックへの投身自殺を試みるもトラックそのものが消失し生還してしまった画家、妻に幽霊と思われている葬儀屋、妻が別人にすり替わっていることに気付いた外科医。本作品は、不可思議な体験をした彼ら群像劇の体裁で物語はすすみます。登場人物が交互に、惑乱した心情を吐露していくわけですが、足元を揺るがすようななんとも幻想的な雰囲気が漂っています。狂気でかたずけられてしまう危うさをはらんでいますが、語り口の巧みさに酔いしれ、だまし絵の世界で遊ぶのが正解なんでしょうね。
skellig@topsy-turvy
21
精神を病んだ人々と精神科の人々が織りなす、不気味ミステリ。夫は死んだと言い張る葬儀屋の女、自分は分裂していると思い込む主婦、自分の周りのものが消えると考える男、妻は別人と思い怯える医者。当初バラバラだった患者それぞれの「妄想」事象が「現実」として関連し合い解きほぐされていく過程は興味深い。少々綺麗にまとまり過ぎな気がするのと、患者たちの「狂気」自体<事件の論理といった印象なのが個人的には残念だった。全体的に不穏で落ち着かない雰囲気で、嫌な後味が(良い意味で)残る。2013/09/04