内容説明
突然町に現れたキャンピングカー。その中で夜毎音楽を奏でるのは、アッティルカイラーと名乗る不思議な放浪集団だった! いぶかしみながらも彼らに近付く界隈の住人は、途端にそのにぎやかな調べに魅了される。音楽がもたらす幸福の輪は少しずつ広がっていき……(「アッティラ!」)。第4回小説宝石新人賞を受賞した表題作の他2編を収録。やさしさあふれる作品集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ぐっち
23
表紙買いしたら、解説が北上次郎で、なんのことはない私がズバリターゲットだったのだなと思った。国籍不明なアッティルカイラーの人達の、音楽と酒と料理に癒される。曲のタイトルがシンプルで良い。・・・「酒はうまい」「飯はうまい」「恋は素敵」「子どもは可愛い」・・・いつも自分は、うまい酒と飯、素敵な恋、立派な子育てを探してうろうろしてきた気がするけど、逆さから見るだけで人生は素敵なものに満ち溢れるとは。他の2編もふんわり音楽つながりで、「マルチャペル」の木がすごく印象的。次の本も文庫化したら読む!2015/08/25
わいほす(noririn_papa)
8
不思議な小説である。風変わりな創作料理を食べた気分。よくわからないまま引き込まれていった。音楽の持つ魅力と言葉遊びに溢れていて面白い。著者の未完成の魅力と感性溢れるデビュー作。ただこの感性は諸刃の刃。「アッティラ!」はよいが、二番目の「ほもよろを」にはちょっと首を傾げてしまう。「マルチャペル」も面白いが、話がバラバラの感がある。ただこの「マルチャペル」を読んで、ユーミンの「ダンデライオン」を「君はなんでライオン」と歌っていた友人を思い出し、笑ってしまった。2015/02/10
きらら@風邪こじらせ中
8
全て新鮮!中盤までは面白い話なのに、最後の最後にはほっこり、心温まる話になる。『アッティラ』はその後どうなったのかすごく気になる。でもこの余韻がまたいいのかも。少し展開早くないか?と思うところがあったけど、これがアッティルカイラーなのかもしれない。解説にもあるが『マルチャペル』がすごくいい。スギリョーといぶきの性格の温度差が好き。でも根底は一緒なんだろうな。作品の中でのマルチャペルの話が本当にあるのか気になるところだけど私は敢えて調べない。2015/01/11
*ニコル*
5
不思議な読了感。そのとき自分が思ったように、自分がしたいように生きよ!って言われている気がしました。子どもの頃、田舎ながらアフリカ?の音楽グループの演奏を聴くイベントが夜、野外であったのだけど、アッティルカイラーの音楽はあんな感じなのかぁ、と懐かしくなりました。アッティルカイラー達の無国籍居酒屋、行ってみたいなぁ〜!2015/02/23
asanosatonoko
3
まだデビューしたての作家さんだそうで、受賞作である表題作他二編。作品ごとに作風が微妙に異なり、試行錯誤されてるのかなと。表題作がやはり一番個性を感じて何を書きたいのか明確なテーマが伝わってきたと感じました。先祖代々流浪する民アッティルカイラーの一族に出会い魅了された人々のお話で、歌が重要なモチーフになっている。歌詞が素朴で実際に楽器の演奏と合わせて聞いてみたいなと思わせる。2015/04/02