内容説明
平成22年、23年の月刊誌『淡交』での連載を単行本化。作家・山本兼一氏が小説『利休にたずねよ』の取材を通して出会った利休ゆかりの茶道具、茶室、茶庭などについて綴ったエッセイ集。いくつもの情景から利休の心の深奥へと踏み込んで人間・利休の輪郭を炙りだしていきます。これまで誰も語らなかった若き日の利休の恋とは? その死の真相とは? 巻末には十五代樂吉左衞門氏と待庵で行った対談も収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
紅香
33
山本さんの『花鳥の夢』『利休にたずねよ』の大ファンな私。その物語に導かれるように夏、大徳寺へ狩野派の障壁画と利休の茶室を訪ねた。樂家の茶碗もこの冬、展覧会に行き、順当に山本さんの足取りを歩いているなっと改めて嬉しくなる。利休の背景には秀吉を始め有名人が勢揃い。その権力の中で生きた利休に俄然興味がつきない。実際に目で見て、感じることはとても大切なことだと文章を読んで思った。一子相伝の樂家の茶碗を守っている15代目、樂吉左衛門さんと山本さんの対話もありファンとしては大満足な一冊。2017/01/29
ひこうきぐも
30
図書館で借りる。「利休にたずねよ」を読みさらにこの本で理解を深められて気がします。じっくり読見たい本です。おかげで図書館の期間を延長して読みました。2014/04/09
さち
21
月刊茶道誌に連載されたエッセイ集をまとめたもの。利休取材時に得られた文献や現物といった歴史的根拠を徹底的に調査した上で、大胆な仮説と情緒を創作されたことが分かりました。想像以上の徹底さでした。利休に訪ねよを読了後本書を読むと面白さ倍増!文化や茶道について詳しく、一気に読む…という感じではなくても、エピソードと対応するお話も多く、創作秘話的にも楽しめました。作者は幼い頃から利休や永徳が身近にあったとか。また「芸術家よりも工匠を取材してきた」とあり、なるほど…と山本氏の背景が垣間見られた点も興味深かったです。2019/11/03
mymtskd
17
「利休にたずねよ」執筆時の綿密な調査や膨大な資料を読んだからこその鋭い洞察が感じられた。千家流のお稽古で畳の目を数えるというのは、ただただ言われるままに行っていたが、それは利休居士の鋭利な感性や美学に基づく「特殊な点前」なのだと気づかされた。視点が変わって目の前がちょっと開けたような気がした。悪趣味とされる秀吉の黄金の茶室も実は利休居士の美学が深くかかわっていたのではという見方も面白く、熱海の美術館でその検証をされたのがとても興味深かった。2024/06/29
ムカルナス
14
利休とはどんな人物だったのか?なぜ秀吉に切腹させられたのか?著者は利休をイメージするべく所縁の茶室や茶道具、禅寺を尋ね歩く。そして最後に十五代楽吉右衛門氏と利休の国宝茶室「待庵」で利休像について語り合う。長次郎の子孫である楽氏は著者とは別の視点で利休をとらえていて両者の対談は奥深く興味深いものになっている。しかし待庵を躙り口から一度拝見しただけの私は論外としても、いくら尋ね歩いても当時の空気を知らない現代人にはやはり判らないのだろうな・・・だからこそ尋ね歩きたくなるのかもしれない。2023/10/05