内容説明
魏・呉・蜀、三国が並ぶ中華動乱の時代。天才軍師・諸葛孔明に見いだされ、その才能を受け継ぐといわれた武将、姜維(きょうい)。強大な敵軍が迫る中で、師への思いと祖国を守るために、姜維は戦い続ける。三国志の最後を飾る名将の物語。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。
如水
45
『天水の麒麟児』事、姜維が主人公の話です。話の最初は何と【五丈原】。つまり孔明死後の三国志。中々珍しい御話です(それ迄の話は回想)🧐蜀漢から見た三国志なので悪雲しか漂って無い💧又、後世の評価で『国を衰退させた張本人』と言われた内容をズバッと話の登場人物達に言わせてる所がこの本の凄い所かと(まさか諸葛譫に…😩)。さて、この姜維、『何故北伐に拘ったか?』がキーでこの話もそこん所を中心に話が回ってます。滅びの美学、とまでは行かなくとも、『その男の矜持』知りたくなりません?そんな本です。2020/05/31
とし
25
孔明亡き後の蜀を支えた姜維を主役とした作品。偉大な前任者の後ということで周囲からも冷ややかな目でみられながら、戦いぬいた姜維。孔明は姜維にとって、師匠でもあり父親的存在でもあったはず。三国志は好きでいろいろ読みましたが、姜維を主役とした作品は珍しく面白く読めました。裏切りが多かったこの時代で、自らの志をもって戦った存在には心打たれました。三国志後期ということで、前期とは違った魅力があります。関羽、張飛などのキャラクターはいませんが、緻密な感じが良いですね。姜維の最後の一発逆転を狙った作戦には感動しました。2017/01/17
鐵太郎
24
昔、三国志演義とか、吉川英治の三国志とかを楽しんでいたミーハーの時、曹操と趙雲がご贔屓でした。その後いろいろ正史とかそのほかの物語を楽しむうちに、権謀術策と裏切りに終始する人々ばかりの時代に、趨勢に逆らって真摯に生きようとした人々に魅力を感じるようになりました。諸葛亮もその一人ですが、姜維にも興味を引かれたもの。「それからの三国志」(内田重久)も面白かったのですが、この、小前さんの姜維もなかなかに魅力的です。いつの間にか田中芳樹二世(失礼w)から小前亮一世になっていた作者にまた会えたのも、よかった。2015/02/16
maito/まいと
23
文庫版改めて読了。やはり、三国志は孔明の死で終わったんだなあ。そしてそれは姜維が夢見た舞台が、もう訪れないことの証でもあった。よく姜維は侵攻ばかり考え政治をおろそかにした、とか、戦術はともかく戦略は孔明には及ばない、とか言われるけど、そりゃそうだ。彼が願った世界は孔明や仲達たちがいて、初めて成立する世界なのだから。強敵がいなくちゃ自分が保てないかのような生き様しか自分に課せなかった麒麟児。だからこそまぶしくもあり、切なくもあった。2015/07/23
フミ
22
諸葛亮の死の直前という、重い場面から始まる、異色の三国志小説です。しかし、成都へ帰還してからは、姜維、蔣 琬 、費 禕たちの国家運営の話。魏の政変で亡命してきた、夏侯覇と、姜維の北伐など、人物をピンポイントに少なく押えながら、後期の蜀漢の話を面白く描いています。後半、120頁程からは、魏の将軍である「鄧 艾&鍾 会」、そして蜀漢を守ろうとする姜維…この個性的な3人の生きざまに焦点を移して、蜀漢の最後を描いていく感じです。特に後半から登場の2人は、生い立ちから考え方まで、まったく違うので、興味深かったです。2024/03/17