内容説明
ある大学の研究所で進む、記憶メカニズムの解明。記憶とは何なのか。記憶はなぜ「嘘」をつくのか。そして、第三者が記憶を共有することは可能なのか――。過去の記憶を失い、長期記憶を保持できなくなった広田学は、記憶をコンピューターにコピーし、読み込む研究に被験者として参加し続ける。彼だけが知らない。すぐ傍らで、恋人の小野里美が助手を務めていることを。
目次
プロローグ
◆記憶の海を泳ぐ◆
カルテ001 オノサトミ
◆消えてゆく記憶◆
カルテ002 ハシモトユウイチロウ
◆覚醒する記憶◆
カルテ003 マキノユカ
◆記憶の旅◆
カルテ004 モリシタナオヤ
◆記憶を紡ぐ糸◆
カルテ005 ヒロタジュン
◆記憶の海の先に見える景色◆
カルテ006 ヒロタマナブ
エピローグ
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
あつひめ
21
何かを思い出そうとしても何も出てこない・・・ブラックホールにポイって投げ込まれたような感覚。今の自分、これからの自分、過去の自分を繋ぐ事ができないもどかしさ・・・たぶん、ドラマで見るともっとグサッとこちらの心に迫ってくるのでしょうね。思い出って自分でついつい美化しそうになる。また思い出したくない物は蓋をして二度と顔を出さないように閉じ込めたくなる・・・。でも、自分の心に染み付いているのは同じなんだけど・・・。大切な人が記憶障害になったら・・・辛いよなぁ～。ハシモトさんの記憶、モリシタさんの記憶が印象的。2010/08/07
Teruji Shinozaki
6
想いを大切に。想いを信じている。 そんな人達のお話。 いろんな人の想いが、集まり。形を変えて、進んでいく。 そう、ここで、大切なものを再発見して。 読了後、言葉に出来ない何かを、もらったような気がする。2012/06/26
景
3
保存されている記憶を辿り、記憶の回復を目指す。なんだか梶尾真治さんの作品を思い出した。忘れたくないもの、それは幸せなころの思い出。2010/07/25
本夜見
2
覚えていられない記憶、思い出したくない記憶、時が経ち薄らいだ記憶、忘れたくないのに失われる記憶。色々な記憶を読み込むのに覚えていられない男性、忘れられてしまった恋人。切ない、もどかしい。2011/04/18
oyasan
2
もし記憶を記録できたら・・・。そんな願望を実現するための研究過程の事故で、脳に原因不明の障害を負った男性。事故前５年の記憶を失うとともに、３分間しか今の記憶を保持できないことに。その彼を愛する女性や家族の苦悩。記憶できないことへの苛立ち。いいフレーズも出てくるんだけど、なんだかあと一歩って感じ。そのなにかは終わり方だったり、全体のストーリー性だったり・・・かなあ。2010/07/30
