内容説明
『私の万葉集』第四巻。ここでは、大岡信が「万葉集」巻十三から十六までを取り上げる。特に力を入れている巻十六は歌数こそ少ないものの、その多様性と知的興味を誘う魅力溢れた刺激的巻である。正岡子規もこの巻十六について書いているように、「滑稽的美」を感じる特異かつ最も重要な一巻である。
目次
万葉集 巻十三
万葉集 巻十四
万葉集 巻十五
万葉集 巻十六
あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
しゅてふぁん
50
巻十六は万葉集中で最もユニーク特色を持った巻であり、正岡子規も『巻十六を読め』と言っている。一首ごとに歌の背景が詳しく書いてあったりと確かに異色なのは分かったけれど、ちょっと難しい。巻末の参考資料『萬葉集巻十六/正岡子規』は読みごたえがあった。漢文の書き下し文のようなこの文章は声に出して読むと一層味わい深く、私の思い描いていた子規の印象そのままで強烈だった。この文章のおかげで、この本の印象が全て正岡子規になってしまった(笑)2019/02/06
かふ
22
だんだん面白くなってきた。普通4巻ぐらいなると飽きてくるんだけど、万葉集が面白いのか、大岡信の解説が素晴らしいのか、万葉集巻十三「長歌」巻十四「東歌」巻十五「遣新羅使、極悪人カップル相聞歌」巻十六「シュール万葉集」は素晴らしい解説と現代語訳。巻十三「長歌」は、和歌が短歌(32文字)中心となる以前は五七調で続けていく長歌であった。それは祝詞や民謡調なもの、例えば人麻呂が皇族の挽歌を歌う場合や山上憶良の「貧窮問答歌」は貧民に成り代わって(憑依して)歌っているのだ。2021/03/02
はちめ
7
またもや16巻の印象だが、家持の痩せた人をからかう歌はどこか空々しい感じがする。16巻を編集したのが家持だとして、編集の過程で自分も16巻向きの歌を詠んでみたくなって作ったのではないだろうか。 鹿と蟹の長歌について、まだ明日香時代なので天皇に対する畏敬の念が表に出ていると解釈しているが、それは違うような気がする。人麻呂が天皇を神として賛美したのは既に天皇に対する素朴な畏敬の念が失われつつあったからであり、蟹と鹿の長歌も皮肉を込めた畏敬の念だと思う。☆☆☆☆☆2022/09/11
らい
7
(四)から手に入ったので、中途半端だけどここから読んでみた。四巻ずつの区切りだったから問題はなかった、というか、万葉集中でも十六巻は特異なようで、滑稽な話やナンセンスな話がてんこもり、解説も力が入っていて、なんか当たりだった気分。歴史っていうと、政治の変革がメインで、表に出てくる人は大体決まってるけど、名もなき人たちの歴史ってのは、心惹かれるものがあった。世界が家庭やその町での生活だけなんだから、恋や愛が一番大切になってくるのは、当然のことか。心情一辺倒じゃなくて情景に託す技法は、センスがすごいなあ。2021/05/14
はちめ
5
どうしても巻十六の印象になってしまうが、このような歌謡的な地口を評価したのが正岡子規だというのが興味深い。☆☆☆☆★2019/12/02