岩波新書<br> 原発と大津波警告を葬った人々

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岩波新書
原発と大津波警告を葬った人々

  • 著者名:添田孝史
  • 価格 ¥814(本体¥740)
  • 岩波書店(2015/02発売)
  • ポイント 7pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784004315155

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内容説明

科学の粋を集めたはずの原子力産業.しかし,そこでは地震学の最新の科学的知見が活かされなかった.地震学の進化過程において,その後のプレートテクニクス理論導入において,どのような議論で「補強せず」の方針が採られたのか,科学ジャーナリストが詳細に明かす.そして今,新基準による判定がその反省に立脚しているのか,真摯に問う.

目次

目  次
   プロローグ

 序 章 手さぐりの建設
   プレートテクトニクス理論以前の時代/揺れには三倍の余裕──「原発と地震」の歴史/五五キロ遠方の、わずか一二年分の津波データで設計/大津波の言い伝え──女川原発はなぜ助かったのか/バックチェックの仕組みなし/本書の構成
 第1章 利益相反──土木学会の退廃
   電事連資料/北海道南西沖地震/七省庁手引き/数値解析の誤差/土木学会津波評価部会/土木学会手法の策定手続きにおける問題/対策は二〇センチ/首藤氏に聞く
 第2章 連携失敗──地震本部と中央防災会議
   阪神・淡路大震災の教訓/地震本部の設立/日本海溝の津波地震/中央防災会議の「長期評価つぶし」/不可解な中央防災会議の動き/東電から圧力はあったか/専門家の意見は分かれていたのか/ばらばらだった
 第3章 不 作 為──東電動かず
   二五年前──地層に残された「警告」(一九八六年)/一七年前──ずさんな想定見直し(一九九四年)/九年前──見えていた二つの津波(二〇〇二年)/明かせない訳(二〇〇二年)/確率でごまかす(二〇〇六年)/一五・七メートル──津波地震を「想定せよ」(二〇〇八年)/貞観津波の正体(二〇〇九年)/地元を騙す(二〇一〇年)/四日前の「お打ち合わせ」
 第4章 保 安 院──規制権限を行使せず
   三つの不作為(二〇〇〇~〇二年)/担当課長「揺れが重要課題だった」/危機感抱いていた職員も/海外のアクシデント例を生かさず/安全性再検討(バックチェック)の遅れ/徹底した情報隠し
 第5章 能力の限界・見逃し・倫理欠如──不作為の脇役たち
   福島県、「M八津波」想定したのに動かず/津波地震「無視するのも一つ」と助言した地震本部委員長/ 「原発はタブー」だった地震学者/日本初の倫理綱領が生きなかった土木学会/メディア1 「想定外」を生み出す構図追えず/メディア2 度重なる手がかりの見逃し/メディア3 吠えない「番犬」
 終 章 責任の在処
   事故調の限界/証拠出し渋る規制委員会/基礎的な事実を確かめない検察/検察審査会の明快な判断/裁判への期待と限界/それぞれの立場で巧妙な責任回避/ 「安全文化」でごまかす/川内原発が繰り返す過ち/ホイッスルを吹きやすくする仕組み
   エピローグ

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

kinkin

69
あの地震や津波は「想定外」だったという言葉。私はそもそも地震や津波というのはその大きさは想定出来るものではないと思う。なので大丈夫という意見には真っ向反対だ。いまだわかりきっていないことを議論すること自体ナンセンス。原発は大丈夫と唱えた学者、この設計なら大津波は防げると言った人々、皆学問や研究の壁を超えて考える時期だ。それでもなお安全神話を盾に原発再稼働を行おうしている政府や電力会社は、福島の二の舞いを繰り返すのか・・地球が出来て約46億年、その間の吹けば飛ぶような時で物事を想定することの虚しさを知る。2016/12/23

壱萬弐仟縁

35
結論:想定外の津波が来るおそれがあること、その場合は炉心損傷や全電源喪失を引き起こすことを、東電や保安院は知っていた(ⅸ頁)。これは悪質だ。地震地体構造:地震の起こり方には領域ごとに一定の傾向があるという考え方(25頁)。死ななくていい人まで犠牲になったのでは、という疑念もある。東電から専門家への金の流れも未解明(80頁)。国民に説明責任を果たすべき。事故時の津波想定を保安院は適切と認めていたか、曖昧(142頁)。許しがたい。被災者心情を何だと思っているのか? 2015/09/03

スパイク

24
読み始めは腹立つことの連続でした。女子高生のスカートを盗撮した大学教授と東電からお金もらって原発推進してる大学教授のどっちが恥ずかしいか?なんてことが頭に浮かんだ。よくもまあこんな出鱈目な奴らが揃って原発を動かしていたもんだって思いました。(実際その通りなんでしょうが)でも、そのひとつひとつの言い訳や無知さ非常識さが私(たち)に無いと言い切ることができない。ましてや、明日の天気予報さえ当てることのできないのが科学というものであるんです。安全率を2倍にするの?3倍と見るの?私には決められない。恥を知れ!私。2015/07/05

おさむ

22
ジャーナリストの視点からあの原発事故は「組織的な人災」だったと指摘する良書。福島第一が全国の原発で最も津波に脆弱だったという電事連データや高い津波想定を入れようとした幻の7省庁手引き、誤った権威付けに利用された土木学会基準、そして東京電力の隠蔽体質。起こるべくして起きたという言葉が正しいように思いました。2015/05/10

風に吹かれて

20
2014年刊。  途中で放り出したくなった本である。次々に明らかにされる不作為にうんざりしてしまったためである。  当時、あの大津波は「想定外」と聞かされた。しかし「想定外になるとよい」「想定外としておこう」とやり過ごしてきたのが実態のようだ。 →2022/03/20

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