内容説明
「私とは何か」と問う者こそが、「私というあり方」をする者である。過去と現在、両立しえない二つの時間をつなぐ能力こそが、「私」である。時間論と身体論の邂逅によって「私」という不可思議な存在の謎に迫り、「私というあり方」は解き明かされてゆく。既存の哲学の焼き直しでなく、自身のことばで考え抜かれたまったく新しい自我論が立ち上がる! (講談社学術文庫)
目次
まえがき
第一章 「私とは何か」という問いの特殊性
第二章 知覚の現場に私はいない
第三章 見えるものと見えさせるもの
第四章 想起とその主体としての私
第五章 観念に対する者としての私
第六章 「この」身体から「私の」身体への転換
第七章 他者たちの成立
第八章 不在としての私
エピローグ 私の死
原本あとがき
学術文庫版あとがき
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
テツ
20
「私」とは過去のある瞬間を主観として感じ取れる存在であるということ。過去を想起することにより「私」も「いま」も目の前に誕生する。私の在り方。自我。「私」はどこにいるのか。どのように「私」を確認したらいいのか。世間の大人たちが根本的な「私」のことを全く理解せずに宣う「自分を大切にしろ」的なお話がどれだけ浅薄なのか。「自分」のことも「私」のことも考え抜いたこともないくせに。時系列に沿った「私」を想起出来なくなったときに、きっと「私」の存在は崩壊するのだろう。儚いもんだな自分なんて。2020/02/15
SOHSA
13
言説は非常に丁寧でやさしく分かりやすい。時間、特に過去と過去を想起する現在からの「私」という自我の在り方。視点としては面白く興味深いが、必ずしも同意できない部分が多々あった。論理的にどうしても腑に落ちないのだ。本質と働きを説明するための核となるべきところをトートロジーに終始したり超越論的存在であることに帰結したり、どうにもストンと腹に落ちてこない。再読の要あり。2013/04/11
ichiro-k
12
「自我」「他我」の問題だろうが、内容はいまひとつ腑に落ちない。 読了後、〈私〉を認識できなくなるアルツハイマーや認知症を発症するのがますます恐ろしくなる。2012/11/10
さえきかずひこ
6
私とは、現在の思考や知覚の場面ではなく、過去を想起する場面で登場してくるという考えをくりかえし丁寧に述べた本。自我論というより、自我を成り立たせる空間と時間についての論考で、込み入っている。カント的だなぁと感じながら読み終えた。中島さんの時間論は他にも買い貯めてあるので、そちらも読んでみよう、かな。2017/07/01
大道寺
5
本書はタイトル通り自我論を古今の哲学者の見解を引き合いに出しながら語る本で、著者のいつもの調子の自分語りはほとんどない。自我論を立て続けに読む流れが来ているのでタイトル買いした。著者は「私」とはエピソード記憶に関して実際には行わなかった可能性も含めて語ることができるような存在であり、「他者」とはそれができると見なすことのできる者すなわち過去世界について言語のみで意思疎通できる者(「他の私」)であると言う。(1/4)2012/10/22
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