文春文庫<br> 光線

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文春文庫
光線

  • 著者名:村田喜代子
  • 価格 ¥621(本体¥565)
  • 文藝春秋(2015/02発売)
  • ポイント 5pt (実際に付与されるポイントはご注文内容確認画面でご確認下さい)
  • ISBN:9784167902896

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内容説明

東日本の大地が鳴動した数日後、ガンの疑いが現われる。日本列島の南端の町で、放射線治療を受ける1ヶ月余のあいだ、震災と原発をめぐる騒動をテレビで繰り返し見つめつづけた。治療を終え、ガンが消えた身体になった著者は、「自分も今一度生きよう」と心に決める――。一国の災厄と自らの身に起きた変動を、見事に文学へと昇華した稀有の連作小説!

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

あんこ

21
今日、読もうと積ん読にしていた村田作品。放射能と治療のための放射線が融解していくという錯覚はじんわりとした恐怖。気遣いがひしめいていた時間も四年経ち、どうか手放しで喜ぶ笑顔が増えますようにと思ったあたり、わたしもようやく癒えてきたのかなとぼんやり思った。「ばあば神」はさすが村田作品。切れ切れとした文節の切迫感。神さま仏様と言いながら、「ばあば」たちの並々ならぬ姿を描くのは秀逸。震災がところどころに散りばめられていつつ、直接的な被災の裏にも日常があったことを思い出しました。2015/03/11

百太

17
一番初めの短編「光線」良かったです。2015/02/22

あ げ こ

9
鈍感さを持たぬもの、聡く、鋭敏なものたちの苦しみ。立ち向かうことの出来ない、圧倒的な力をふるう脅威への、畏怖。踏みしめていたそこ、じわじと広がり行く汚れに、傷みに、気付いた瞬間の、茫洋とした、哀しみと、怒り。不明瞭なまま、遠ざけ続けてきたそれら…近付き、触れてしまったために、生きていることの、生きて行くことの、怖さみたいなものが、自らの心の奥底で、ひっそりと、蠢き始めたような、不気味な脈動を感じる。不快で、堪らなく怖くて、だが、目を閉じても消えず、心はもう、それを見過ごしてしまうことを、許しはしない。2015/02/06

いけきょう

6
著者自身が、東日本大震災の直後、乳がんが見つかり、連載など仕事を中断し放射能治療を経験された事をもとに、がん治療、放射線・放射能、大震災をふまえた連作にもなっている短編集。がん治療は妻の治療に付き添う夫の視点で書かれている。そこに、村田喜代子という作家の大きな力量をみる。個人的に、種類が違うので治療法も違うが、自分もがん患者であるので、素直に魂にひびいた作品集だった。2015/11/02

Noelle

5
最新の放射線による癌治療を受ける主人公が、同時期の原発の放射能汚染、滞在する桜島の噴火は地球深部の核分裂で、と思いを深める、3.11前後の「光線」「原子海岸」は、作者の体験と相まって、ありきたりでない視点からのものだった。「ばあば神」は震災直後の若い母親の思いが間のある独特の文章で綴られる。他の作品はそれぞれの「地」にまつわる想像もしない筋立てで、独特の味わいや気づきが独特の雰囲気である。これぞ芥川賞作家の文体で、濃厚な内容が短編という枠の中で過不足なく語られる。初読み作家だったがさすがであった。2019/04/01

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