内容説明
〔アメリカ探偵作家クラブ賞最優秀ペイパーバック賞受賞〕その夏、絆で結ばれた11歳の少女二人は、4歳の少女を“殺した”――裕福な家で育った名門校の生徒アナベルと、貧困家庭に育ち読み書きできないジェイド。二人が偶然友人になり、偶然近隣の少女と遊んだ時に悲劇が起き、二人は別々の矯正施設へ送られた。そして25年後の夏、リゾート地の遊園地で少女が殺された。そのことが、会うはずのない二人を結びつけていく……。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ヴェネツィア
293
プロローグ以降も何度も現れる25年前の事件の回想は、アンバーとカースティにとって、けっして逃れることのできない罪の贖罪を強い続けるし、読者にも執拗なまでにそのことを意識させる。本書におけるミステリーとサスペンスは、犯人探しにはなく、もっぱら彼女たち二人が心理的に追い詰められてゆく過程を克明に描写してゆくことにかかっていた。そこが従来のミステリーとは一線を画する点であり、成功もしている。とりわけ、最終シーンのベルの決断は、もうほとんど実存的な意味の領域に達していたのである。2023/08/22
*maru*
47
あの夏…私たちは一人の少女を“殺した”─。何年も、何十年もかけて築き上げてきたものが、一瞬で崩れ去ってしまう。あの時の少女たちは、こんな未来を想像できていただろうか。過去の事件の真相が明らかになり、彼女たちには少なからず同情も覚えるが…やはり罪は罪。それぞれの加害者意識と希薄な人間関係。さらに執拗なメディアやストーカーなど読んでいて気分の良い作品ではない。しかし、絞殺事件の犯人とアンバーの会話には鳥肌がたった。憎むべき相手だがその造形には感嘆せざるを得ない。不公平な世の中で生きる者たちへ…結末も良かった。2019/08/23
紅はこべ
39
邪悪じゃない、見捨てられた、痛々しい少女たちだ。80年代の英国では、子供達はこんなにも守られていなかったのか。それに女の人生とは出会う男によって違ってくるものなのか。読み終えて暗い気持ちになった。未成年犯罪者を保護すべきか、罪状に応じて厳罰に処すべきか、どこの国にも共通する悩みだ。舞台は英国だが、あまり英国らしさは感じられず。作家のアン・ペリーとノンフィクションの『心にナイフをしのばせて』を連想。登場する男の殆どが気持ちの悪いろくでなし。2015/05/23
mii22.
39
これは本当にイヤミスなのか...『邪悪な少女たち』というタイトルから想像していた物語とは全然違っていました。私は泣いてしまいました。たった1日の絆で結ばれた11歳のふたりの少女が犯した罪。そして25年後リゾート地でおこった連続少女殺害事件が、二度と出会ってはいけないふたりを結びつけて悲しい結末へと...。過去と現在が交差しながら少しずつ過去の罪が明かになっていく展開がグイグイ読ませていきます。貧困や猥雑な町の描写や人物像の描写も映像が浮かぶようです。救いようのない物語ですが、読み物としては面白かったです。2015/01/28
barabara
25
どよよ〜んと、物語に入り込んでしまった。まさかの立場逆転には運命を呪ってしまった…人は環境でこうも変わる物なのか。そして少女期の残酷さが招いてしまった悲劇、しかし故意でない事故だったのがせめてもの救い、そこに全ての根源があるような気がする。少女たちもそこに慰めにもならない慰めを見出して生きてきたのではないだろうか。しかし二人が出会ってしまった映画の様なシーンは是非実際の映像で見てみたいと思った。ラストは…とにかくやるせない。しかし衝撃的かつ美しささえ感じる印象的な結末でしっかり胸に刻まれた。2014/12/28