内容説明
白昼に新聞紙を鷲掴みにして死んでいた男性に何が起こったのか――。音無美紀警部のめくるめく、ぬいぐるみへの妄想と、事件の対比が秀逸な、犯人当てミステリ「お弁当ぐるぐる」。停電時のエレベータ内で起こった殺人事件。もっとも怪しいのは、手や服を血で汚した指名手配の男だが。不可能犯罪を劇的に描く「赤い糸の呻き」。都筑道夫の〈物部太郎シリーズ〉の傑作パスティーシュ「墓標の庭」など、バラエティー豊かな5編を収録。“西澤ワールド”全開ともいえる、著者入魂の傑作短編集。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
🐾Yoko Omoto🐾
111
ノンシリーズ短編集。解説で「“そんな馬鹿な”をどこまで“なるほど。そんなこともあるのか”に転じられるか」という一文があるのだが、西澤作品読了後いつも感じる納得感はまさにそれだ。形式としてメインキャラとオブザーバー的キャラのディスカッションによって真相に迫るタイプが殆どで、独特の倫理観の上に成り立つ論理の展開は流石である。またお得意のやや倒錯気味の女子キャラのせいか、相変わらずの変な名前のせいか(笑)どこか馴染みのあるキャラに思えてしまうところもいい。マイベストは動機、ロジックともに秀逸な「対の住処」。2014/07/29
あも
47
第3弾。コメディタッチなミステリ短編集。お弁当ぐるぐる/墓標の庭/カモはネギと鍋のなか/対の住処/表題作。の5編。冒頭の1編のみ後にシリーズ化するぬいぐるみ警部。コメディタッチではあるが、きっちり殺人事件は起きる。主人公は刑事が殆どだが、推理の過程は親しい者との会話中心。ある意味安楽椅子探偵モノに近いのかも。短編とはいえきっちりキャラが立っているので、事件についてあーでもないこーでもないと語り合う様を見るのがこれまた楽しい。対の住処は動機含むまとまりが美しく、表題作はオチが予想外。楽しく読める1冊だった。2017/05/29
hanchyan@ふむ……いちりある
40
“安楽椅子もの”新味模索!とばかりに名探偵とワトソン役、そのコンビにどんなキャラを当て込むか?の展示会のような短編集。どんだけ「退職刑事」好きなんだ(笑)。仮説・反駁を積み重ね強引にロジックを推し進めた結果の意外性と、その結論に対しなんともあっけらかんと突き放す無責任さという、西澤作品ならではの本格メソッドも健在でなによりだ。前者(キャラ)的にも後者(推論の応酬・トンデモ真相・それに対する無責任ぷり)的にも、「対の住処」が良かった。あとパスティーシュなのに会話が西澤キャラの口調なのが可笑しい「墓標の庭」。2015/09/11
hnzwd
39
西澤ロジックが存分に味わえる短編集。読み終わったあとに軽く読み返しながら伏線を探すのが楽しいです。表題作の「赤い糸の呻き」は、西澤さんらしいフェティシズムもちょっとだけ味わえて満足。2014/07/01
buchipanda3
36
ノンシリーズもの短編集(ぬいぐるみ警部の初篇含む)。著者らしい論理的な掛け合いを楽しめた作品ばかり5篇収録。どれも軽妙な会話で話が進められるが、中身は意外にもゾッとさせられるもの。よく練られた構成に、よく捻られたオチだった。「墓標の庭」は幽霊専門の探偵もので意外な事件の顛末。「対の住処」は真相と動機が怖すぎる。題名が巧い。「赤い糸の呻き」は、エレベーターという狭い密室で起きた事件に隠されていた様々な真相にびっくり。題名の意味を知った時の怖さが光る。さらにオチには唖然。あとがきで紹介された作品も読みたい。2017/04/10
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