内容説明
札幌の病院長一家を密かにむしばんでいるものは? 家族のあり方、生きることの意味を問う問題小説。
北海道大学・医学部を目指す佐川惇一は、札幌の病院長の家に下宿するが、その家庭は病んでいた。惇一の目を通して暴かれる病院長一家を密かにむしばむものとは? 家族を構成する一人ひとりの心に潜む闇に迫り、人間のエゴと真実の愛、生きるとは何かを問う問題小説。
推理小説的要素ももつ、現代文明への批判の書でもある。
「三浦綾子電子全集」付録として、初代館長・高野斗志美氏の産経新聞夕刊への本書書評を収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
美雀(みすず)
36
家庭の恥部は隠したくなるが…。これほど深刻とは思ってませんでした。当時は薬物は現在よりはまだ緩かったのかと。主人公のなよなよした感じは好きになれなかった。2015/03/02
まみ
11
昨年の後半からある家族との関わりの中で 家族について考えさせられる事がとても多かった。 どの家族にも少なからず問題はある。 私にもあるしきっとみなさんにも 家族って難しいなぁって思いながら読みました。 そしてこんなお医者さんはちょっと嫌かも…2022/01/04
チサエ
7
数十年ぶりの再読。どの家庭にもあるだろう闇。どんな人にもあるだろう病み。隠そうとする家族、または見て見ぬふり、あるいは反抗。ずるずると問題を後回しにしても大概いいことはないのに、それを分かっていながら、なかなか解決のために腰をあげられないのが人というもの。人のそのむずかしさが明白に書かれている。結構おぼえてるもので「ああ、そうそう、ここでこう」と思いながら読みました。2023/03/13
sasasegawa
6
いささか、最後が駆け足でわからない部分が多々あるが、この作品の解題にも書いてあるが、どの家にも他の人に知られたくない恥部がある。そんなテーマを扱った作品。ある意味横山秀夫の「真相」に近い部分があるが、タッチの軽さと表現豊なキャラクターがこの作品にのめりこませる。後半の浜雄と余里子の掛け合いは大人たちにみてもらいたいが、全体的には、生きることを考える人にみてもらいたい。2013/09/22
hana
4
日本語がきれい。北海道の空気や淳一のフワフワした若さがみずみずしく書かれています。破れかぶれでも明るい陶吉には学ぶものがあります。未熟な両親のもとに生まれた景子姉妹の不遇に彼なりに寄り添う淳一も素敵です。2016/03/06