内容説明
過ちを犯さない人間はいない。だからこそ愛することはゆるすこと。永遠の愛のテーマ。
牧師の家に育った奈緒美は高校卒業後、友人・京子の兄、良一から求婚される。やんちゃな面を持つ良一に奈緒美は惹かれていくが、良一の人間性に不安を感じ取った両親は反対する。一方、奈緒美の高校時代の担任で、良一の女性遍歴を知る竹山もまた、奈緒美への密かな思いを抱くだけに祝福することができなかった。周囲の声に反発する奈緒美は函館に帰る良一を送りに行き、そのまま結婚生活を始めてしまう。だが、そのわずか数か月後には、良一の冷酷な面を知ることになるのだった。
「三浦綾子電子全集」付録として、 夫・三浦光世氏による「創作秘話」などを収録!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
優希
98
愛とは何かを考えずにはいられませんでした。牧師の家に生まれた美しい少女・奈緒美は、高校卒業後、友人京子の兄・良一と結婚します。結婚後に知ることになる良一の姿がとても辛かったです。酒、女、暴力。人の心の根源にある欲望のままに生きる良一に失望するのも仕方なかったと思います。別れを決意した奈緒美の心に浮かんだ「愛することはゆるすこと、相手を生かすこと」という父親の言葉が苦しい。キリストを知っているからこそ、ゆるしの難しさにとらわれてしまいます。本当の愛とは何かを考える度に心がえぐられるようでした。2016/02/15
優希
82
愛することとはどういうことか考えさせられます。赦すこととは難しいですが、何度も赦すことが愛することにつながっていくように思えました。自分の行いより他人の行いを見て責めてしまうことはできないのでしょう。「愛することは赦すこと、相手を生かすこと」という言葉が突き刺さりました。キリストを知っているからこそ、赦しの難解さに縛られてしまいます。本当の愛とは何かを考えてしまうからこそ心がえぐられました。2019/07/05
たいぱぱ
66
三浦綾子さんの作品を読んだ後は、なかなか感想を書くことができない。自分の心の奥にある原始的な何かに問いかけられ、それに答えられないからだと思う。僕なら友達や兄弟どんな立場でも良一を許すことはできない。義父の台詞「愛とはゆるすことだよ、相手を生かすことだよ」。「なかったことにする」ではなく「自分の過ちを認め、心から悔い改めようとする人を見守ってあげる」。そういう意味だと僕は感じた。宗教は好きではないが、告解というものは意味のある行いだと思う。人は自分の弱さ、罪を認めてこそ正しい道を歩き出せるのかもしれない。2023/04/15
美雀(みすず)
57
「愛とは許す事だよ。」という響きがずっとなびいているようなお話でした。「この人と結婚する。」とは、この人の犯した事を全て許し続ける事なんですよね。「恋」の延長って若い頃には思ってたけど、深くて重きのある言葉ですね。人々は何らかの愛で生かされていることを心に留めて生きていくことだろうなと思います。2015/03/03
ユーさん
51
複雑な人間関係の中での「愛」の位置付けが、どのようなものなのか。深く考えさせられました。前回読んだ「天北原野」も同じ様に「愛」を考えさせられる内容で、どちらも深く引きずり込まれました。旅先へ向かう電車の車内で、風景を見るのも忘れてしまう位の濃い内容でした。次は、「氷点」か「泥流地帯」か、即読みたい衝動に駆られます。2017/01/20