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内容説明
病死に見えて事故死かもしれない、自殺に見せかけた他殺かもしれない、危険ドラッグや過労が原因の死かもしれない。それなのに日本では、犯罪性が疑われる死体の2割が解剖されず荼毘に付されている。また、「死因のウソ」は生きている人間に悪影響を及ぼす。伝染病の発見が遅れ、虐待も見逃され、補償金や生命保険料の支払額に誤りが生じる。解剖、CT検査、DNA鑑定、組織鑑定など法医学者の仕事から、社会問題をあぶり出す。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まる
40
ドラマや小説でなんとなく聞いたことはあるもののよく知らない法医学の世界。日本ではほとんど解剖されないと聞いたことがあったんですが、本当だったんだな、と。法医学の現状を知ることができました。何だかこれなら殺人を犯してもバレないんじゃないかと思ってしまいます。災害時の解剖の必要性については考えたこともなかったのですが、確かにその通りだと。今後に役立てるために必要ですよね。日本も法医学者の待遇が改善され、正しい死因を究明することでこれからに生かせる社会になることを願います。2016/12/30
リキヨシオ
19
犯罪性ありと判断された死体を解剖して医学的見地から死因究明する現役の法医学者により、ガラパゴス化した検視制度が述べられる1冊。警察に届け出がある死者は1年間で17万人…そのうち解剖されるのが2万人…15万人は死因が不明のまま葬られて、犯罪見逃しや冤罪も発生している。先進国の中でも解剖される割合は低いらしく、法医学者の数や解剖はの予算が少ない。検視によって犯罪性の有無を判犯罪を見逃されるケースも多いという。デンタルチャート、指紋、DNA鑑定が身元確認のための3種の神器。東京と地方では死因究明格差が存在する。2015/05/19
showgunn
18
法医学の理念から始まり、具体例を上げながら、法医学者の仕事や日本の状況と海外と比較しての問題点などをわかりやすく、熱のこもった文章で書いた良書。 単に日本の状況を批判しているのではなく、自分の仕事が今よりも公益に資する為には何をどう改善すべきかをしっかりと考えている著者の姿勢に胸を打たれる。 ネットに上がっているインタビューで「解剖をやって死因が分かって、それでようやくこの人が成仏できると思うんです。いつも一緒に戦っているような気持ちで、解剖をしています」と語っていて、安易な言葉になってしまうが感動した。2016/11/16
おおにし
18
日本が検視制度では後進国である理由は、儒教の基本思想の1つである「徳治主義」にあるという指摘は興味深い。おかみは徳が高く、いつも正しいので「おまえが犯人だ」と言えは、犯人の方もおかみに諭されてすっかり白状するという「自白文化」なので、異状死体があってもしっかり死因究明をする制度が立ち遅れたのだそうだ。一方西洋は性悪説を基本とした法治主義の立場で検視制度が発達したという。分類がとても怪しい死因統計を改善するためにも、後を絶たない冤罪をなくすためにも日本の検視制度の抜本的見直しが必要だ。2015/02/21
eirianda
15
日本の異状死の死因は、かなりいい加減。初動捜査で解剖もせず犯罪性の有無を決めるのは、先進国ではないらしい。もしかしたら、多くの犯罪が心不全とか溺死とか、法医学を学んでいない町医者が死因を書き、面倒だと思った警察官が犯罪性なしと判断して、見逃がされているのかも。やたら多い自殺も、他殺の可能性あり。争いごとを好まない優しき日本人、の実体は闇(色々妄想広がる)。システムを整えるのはもちろん、日本人の精神性にも問題あり。問題をとことん解明せずなしくずし。システム構築できず。性善説が本当にいいのか?2017/08/11