内容説明
結婚して八年たったいまもパトリックとサムは深く愛しあっている。ところがある日の真夜中、パトリックはサムの泣き声で目を覚ます。なぜかサムの心は五、六歳児並みの幼い少女になってしまっていて「わたしはサムじゃない、リリーよ、あなたなんか知らない」と言い張るのだ。パトリックはなんとかしてサムを取り戻そうと決意するが…。不条理な試練にさらされる夫婦の姿を描く新境地の連作二篇に加え、ケッチャム節炸裂の衝撃作「イカレ頭のシャーリー」を併録。これが鬼才の現在進行形だ!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
hit4papa
50
タイトル作は、突然妻の精神が5歳児になったら、というフツーに面白いお話しなんですが、ケッチャムの毒々した暴力性がなくて肩透かしです。妻の扱いに悩まされて壊れていく夫の、その過程がねちっこく描かれています。なるほど、こういうシチュエーションでは、男はこうなってしまうのかと納得してしまいました。さて、オチは?は「リリーってだれ?」で語られるのですが、この残酷さは予想外です。もう一編、主婦の感情が沸騰するとき「イカレ頭のシャーリー」は、イカれ具合が好み。短くてキレが良く、ケッチャムらしい毒々な作品です。2018/04/27
安南
40
表紙の可愛さについつられて、初ケッチャム。噂にきいていたので、用心しながら。あら?意外にも夫婦愛の物語?ああ、でもやっぱりグロテスク…。何をもってしてペドフィリアと言えるのか、考えていたら頭が混乱してきた。ついでに、認知症についても考えさせられました…。2014/12/28
空猫
35
友人や家族がある日突然自分の顔を見て「あなたは誰?」と聞いてくる…それも恐怖のひとつだ。それが数時間前に激しく絡み合った妻ならば尚更だ。彼女の中身は「リリー」と言う名の少女になってしまって…。その続編『リリーって誰?』で謎が解き明かされる。漫画なら「憑依」などとありがちな話になるけれど。そこはケッチャムだから胸糞悪いのだ。結末は読者に委ねられたのか?ラストの『イカレ頭のシャーリー』はタイトル通り狂った女の話だった。さすがケッチャムだから裏切らないのだ。2023/01/05
ノコギリマン
29
ケッチャム作品に関しては読了というより、毒了というべきか。表題作『わたしはサムじゃない』とその連作の『リリーってだれ?』はいつもの如くのバイオレンス描写がないけど、充分に心を抉られる奇想小説でラッキー・マッキーとの相性の良さを改めて確認。併録の『イカレ頭のシャーリー』はタイトル通りの癒し系皆殺しぶっ殺し小説となっていて、オマケの短編なのにカロリー高めでした。ほんと、ハズレがないっす、ケッチャム師匠‼︎2016/06/17
♪mi★ki♪
27
映画化する為に監督と共著だとか。仲良し夫婦の嫁サムが突然「私はリリーだ」といきなり人格が幼女に。身体は大人、心は幼女の嫁に旦那が振り回されるサマを描いた連作。なんだこりゃ?全然スプラッタでもなく、久々のケッチャムと思って身構えていたのに肩透かし。3話目の短編では、やっぱりケッチャムは鬼畜系と一安心だけど、1冊読後の欲求不満なんとかしてくれ。2017/01/06