山と溪谷社 ドキュメント御嶽山大噴火

著者名：山と溪谷社

山と溪谷社（2014/11発売）

• ISBN：9784635510240

内容説明

2014年9月27日午前11時52分、御嶽山が、突然、水蒸気爆発。
9月最後の土曜日、素晴らしい好天と絶好の紅葉のシーズン、そして昼どきの最もゆったりした時間帯、
多くの登山者でにぎわっていた御嶽山が、突然、大噴火、多数の死傷者が出るという大惨事となってしまった。
今回の噴火とはなんだったのか―。

生還した登山者たちの証言を中心に、
救助現場からの報告と研究者による分析を交え緊急出版！

第1章「ドキュメント御嶽山の10日間」
9月27日から10月6日までを時系列にて詳細記述。

第2章「七つの証言」
実際に被災した遭難者たちの話、特に生死を分けたその瞬間を掘り下げた内容。

第3章「科学的考察」
信州大学山岳科学研究所の専門家たち、火山学、防災危機感理学、気象学の分野から分析（降灰、雪崩、土石流等）。

第4章「救助現場からの報告」
自衛隊、岐阜県警山岳警備隊、静岡消防局、災害派遣医療チーム、山小屋オーナー、
そして「サバイバーズ・ギルト」（生存者の重荷感）の対処法を災害心理学の立場からも解説。

【本書を読みながら、そのまま参照できる地図が付いています】

この地図に加え、巻頭には災害現場の口絵（8ページ）もあり、多角的な構成となっています。

目次

P7 …… ｜第一章｜ドキュメント　御嶽山の十日間

P61 …… ｜第二章｜七つの証言
P62 …… 「最初は積乱雲かなと思いました」朝日克彦
P73 …… 「生きて帰ることを強烈に考えていました」小川さゆり
P83 …… 「少しでも噴火から遠ざかろうと思いました」垣外富士男
P94 …… 「気づいたら、噴煙が上がっていました」加藤浩平
P105 …… 「二回目の爆発は耐えがたいほどでした」鎌田隆雄
P116 …… 「私たちは噴火の音を聞いていないんです」鈴木康夫
P126 …… 「ああいう漆黒の闇を経験したのははじめてです」津野祐次

P137 …… ｜第三章｜科学的考察・信州大学研究室からの知見
P138 …… 御嶽山と水蒸気爆発　三宅康幸
P160 …… 防災学から御嶽山を考える　平松晋也
P177 …… 噴火時の気象と降灰、そして降雪　鈴木啓助

P191 …… ｜第四章｜救助現場からの報告
P192 …… 緊急を要した行方不明者の捜索　田中浩二（陸上自衛隊）
P200 …… 御嶽山の一番長い日　平田純（岐阜県警察）
P208 …… 困難を極めた捜索活動　繁田陽司（静岡消防局）
P216 …… 災害派遣医療チームの苦悩　上条剛志、金子秀夫（相澤病院）
P224 …… 登山者を守った山小屋の役割　小林洋夫（二の池新館）。

サバイバーズ・ギルドからの超克　広瀬弘忠（災害リスク心理学）

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。

[どんぐり]

2014年9月27日に発生した御嶽山噴火による災害ドキュメント。災害発生から10日間の時系列で追った経過と被災した遭難者7人の証言、火山学者と救助隊の報告からなる。亡くなった58名のうち、55名が火山礫による損傷死、1名が気道熱傷死、死因不詳2名。多くの者が身に降りかかる災難を認識していなかったこと、そして噴煙を見上げて写真を撮影していた。この災害での教訓は、写真を撮ったりメールを打ったりしている暇があったら、「さっさと逃げろ！」「自分の身は自分で守れ！」だが、その判断と行動は容易ではない。

2017/10/15

[hatayan]

2014年9月に御嶽山が噴火して2ヶ月後に緊急出版された記録。無事生還した7名の登山者、救助に携わった医師や自衛隊員の証言、地質学者の分析など。「できることはやった、あとはなるようにしかならない」と覚悟した登山ガイドの小川さゆり氏の記録が圧巻（2016年に『御嶽山噴火　生還者の証言』を著されています）。山頂の苛酷な環境に退かざるを得ず最後まで捜索しきれなかった自衛隊員の無念には心に迫るものが。登山におけるリスクと安全の折り合いをつけるのは永遠の課題だが、登山の下調べや最低限の危機意識は持ちたいと説きます。

2020/04/18

[こばまり]

歴史あるアウトドア系出版社の面目躍如たる労作。当時は事象発生から出版までのスピードの速さにも驚いた。胸苦しい程の臨場感。自然に親しむにはそれ相応の覚悟と知識と備えが必要であることを、恐れをもって思い知らされる。

2020/12/23

[ポルトン]

噴火が起こった時は丁度入院中で手術直後。ニュースの一報や詳細をハッキリ知りませんでした。具体的にどんな噴火でどんな被害が出たのかを知らないままでした。噴火警戒レベルの低い山でも活火山である以上は十分な知識と準備が必要なのだと痛感！被災者証言「シェルターを建てればいいと言う人もいますが、危機感のない人はシェルターが有ってもその場所を確認しない事が多い」場所によっては遮蔽物になるものがなく逃げ場が無かった様ですが…事前に避難経路はシッカリ確認しておきたいと改めて思いました。

2018/05/09

[キムチ２７]

あの時から2年半、私の心ではいまだに風化していない噴火。ヤマケイ新書は無駄がなく、少しでも山をかじる人にとっては非常に事実を伝えてくれる1冊に思える。現場体験・学者による科学的分析・最も知りたかった救助の考察（自衛隊、警察、消防病院、山小屋~と多岐に渡っており非常に良かった）と巻頭の「その時」の写真。最も、結論を言えば「そんなシャッターを切る暇があったら」という言葉は脳裏に刻むべきで痛いが。最後のサバイバーズギルトからの超克という文を読み、魂が震えた。古くはローマ帝国のデシメイトに起源があったという。

2017/05/11