内容説明
英国領に極秘裏に設置された対テロリスト組織。その喧伝されてきた数々の成功は虚偽だったのか? 真実を求める元外交官は、隠蔽の首謀者から命を狙われる! スパイ小説の巨匠の新たな代表作!
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
138
ル・カレ作品は読者をを選ぶかもしれない。散りばめる前半は、時に理解不能で、ここは読者が耐えてただ読み進めるとき。中盤で少しずつヴェールが剥がれていく。そして、終盤で登場人物達が事件に絡めてきた想いが浮かび上がる。センチメンタルな感情は、イギリス的で、これみよがしになることはないが、堪えきれずに溢れるものは、音がほとんどないのに雄弁だ。何かを託す時の人の気持ち、託された方の決意と覚悟。辛抱して付き合う読者に作者が最後に口に入れてくれるチョコは、この上ないsavour,2018/09/03
紅はこべ
22
敵というのは身内にこそいるのではないか。いわゆる獅子身中の虫。ル・カレは英国も米国も信用していないのかな。最近は地味で堅実で良心的な人物が国家の抱える闇に直面するという話が多い。ラストも決して読者をほっとさせてくれない。2015/03/07
Panzer Leader
21
「寒い国から・・」や「ティンカー・・」等の最高傑作とは比較しようがないけれど、それでもそんじょそこらの作家とは格の違いを見せつけるル・カレ御大。余韻を残す苦いラストだが後味は悪くない。まだまだ現役でいて楽しませて欲しい。2015/06/30
Kajitt22
20
外務省外交官の情報収集と、CIA・MI6などのエスピオナージの境界は限りなく低いのか。その打たれ強い外交官の活躍は、ディック・フランシスのヒーロー、シッド・ハレーを思わせ楽しめた。それ以上に巻末、真山仁の短い解説が、グローバリゼイション至上主義にばっさり切りこみ、面白い。今ほんの二か月前には予想もしなかった、反グローバリズムを掲げたトランプ氏がアメリカ大統領になろうとしている。半年後はどうなっているのか。この小説は、ジョン・ル・カレの早すぎた、あるいは遅きに失した警告なのか。2016/12/24
yooou
13
☆☆☆☆★ ル・カレの筆致は衰えることなくますます鋭くなってきている。前半の濃厚さ故に後半のスパートの緊張感は凄まじい。そして投げ出されてくる冷徹さに心が凍えます。2014/12/30