内容説明
「清美、幸平、とうさんは死ねる。今日も一日、元気で死ねる」
職場という地獄に毎朝死ぬ思いで飛び込んできたおれだが、過酷なノルマと上司の横暴にいよいよ耐えきれなくなり……。
妻子はあれど、学歴も根性も甲斐性もない。行き場を失ったおれが最後に見出した、思いもよらない活路とは。
貸金業の舞台裏と、追い込まれた者の悲哀。人生のどん詰まりをリアルに活写して、なぜだか妙に笑わせる、断然オリジナルな長編小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ゆきらぱ
31
この前まで読んでいた「雪の階」の下巻をたまたま用事でいつも行かない日本橋で買った時に同じ中公文庫のスペースに積まれていた本。パラパラめくったらとても面白そう!しかし本屋さんで本を買うのを唯一の娯楽としている私としてはなるべく一回一冊にして楽しむ回数を稼ぎたい。次にしよう。うちの近くで買うことにして帰ったらサッパリ作品名も作者も思い出せず、そうなるとますます読みたい。最初に見つけた本屋なら置いてある場所からわかる。また電車2本乗り継いで日本橋まで行って買ってきました。結果最初から最後まで面白かった。2021/02/19
gachi_folk
3
笑えた。こりゃ完全に著者の実体験がふんだんに詰まってるな。読んでいる最中、名古屋の飲み会でご一緒させてもらった時の、あの何とも優しげでロックでろくでなしの顔が何度も浮かんで来た。そして読了後はおかき2枚分謙虚になれた。是非とも次の機会で「バックれの美学」についてご教授願いたいもんだ。面白かった。2016/05/27
Red-sky
1
笑えるって文言で買ったんだと思うけど、あんまりお好みじゃかった。2017/04/03
CEJZ_
1
1P17行。広小路尚祈?そういえば前に、芥川賞候補でそんな名前を見たような。フールリアリズム?恐ろしい小説だ。退屈の極地に到達するほどの、延々続く消費者金融仕事ネタ。そこから転じて、いつ物書きになりゆくのか、もはや諦めの境地になり、読み手に読んだだけの時間の無駄と徒労、つまらなさと後悔を連想させつつも、後半からは力業でねじ伏せる結末へ。これが2010年代の自伝的暗黒小説の一つの潮流か。繰り返す履歴書記入、面接や失業保険など暗くて背筋も凍る気分を、トラウマティックに思い出した。2015/01/16
otmsy
1
主人公は消費者金融勤務の三十三歳の社員。三十三という年齢は今では青年扱いですが、この主人公はまさに戦後の無頼派のおっさん。とにかくよくしゃべりますし、うっとうしいし、奥さんは大変だろうなと思うのですが、嫌悪感は出てきません。事態はまるで好転しないのに、繰り返し出てくる妻子への思いや饒舌な語りのせいか、丸め込まれたような気分になりました。そういう点では、他の作品にないバランスを持った話だと思います。2015/01/01
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