内容説明
日本の陸軍士官学校で学んだ最強の騎兵軍団、その悲劇の興亡。「日本刀」と「騎兵」が織りなすチベットとモンゴルの悲劇の歴史を、南モンゴル生まれの著者が、重厚で複眼的な歴史観に基づいて、現地取材も行ない見事に再現!
(以下、著者「はじめに」より要約)
本書はモンゴル人とチベット人の歴史だけでなく、日本人の歴史でもある。
しかし、本書はモンゴル人の軍功史ではない。二十世紀を駆け抜けたモンゴル人と日本人の近代化の歴史である。近代化への脱皮の形はいろいろあるが、モンゴルと日本の場合は、それが「日本刀」と「騎兵」だったのである。本書は、モンゴルとチベットの悲劇にまつわるさまざまな側面を「日本刀」と「騎兵」を歴史のキーワードとして取り上げている。
本来騎兵といえばルーツはモンゴルであり、チンギス・ハーンを想起する日本人も多いだろう。その騎兵戦術をモンゴルの侵略を受けたヨーロッパが改良。それを、元寇も体験した日本が明治維新以降学び、日清日露戦争を勝利に導いていった。その日本の進んだ騎兵術や軍事戦略を、今度はモンゴルの青年が日本から学んだというのも、歴史の不可思議であるといえよう。
そうした「日本刀」と「騎兵」が、織りなすチベットとモンゴルの悲劇の歴史、現代史の空白を本書によって、少しでも埋めることができれば、著者として望外の喜びである。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
BLACK無糖好き
6
封建的な農奴制に苦しめられているチベット人の同胞を解放するとの名目で「叛乱分子に対する平和的な鎮圧」を行ったとされる1950年代後半のチベット少数民族へのジェノサイドの記録が関係者の証言で明かされる。「夷を以て夷を制す」の言葉通り、チベット人の鎮圧に、かつて日本の陸軍士官学校による近代的訓練を受け徹底的に鍛え上げられたモンゴル人奇兵部隊が動員される。少数民族への圧政は現在も続いている。中国は日本に対し過去の戦争の謝罪を要求し続けるならば、自国の少数民族への蛮行にも真摯に向き合うべきではなかろうか?2015/05/17
Sumiyuki
5
内モンゴルの民族自決運動と騎兵の悲劇を記した本。満州国の遺産が周りに回ってチベット人を苦しめたとは。陸軍興安軍官学校を、モンゴル人は皆評価しているらしい。前半は多くの実例を引き合いに、モンゴル人と日本人の関係を示そうとするあまり、まとまりがなく読みづらい。2015/11/25
くれの
4
家族的な間柄のチベット人を殺さねば中国人に殺されるモンゴル人たちは精鋭の日本式騎兵隊を組織し山岳民族を抹殺します。しかしモンゴル民族も粛清される。夷を以て夷を制すとは中華思想の本質を最大に悪用した侵略手段でしょう。2014/12/20
しんさん
3
戦前、日本をパートナーに近代化、独立を目指した南モンゴル。戦後は中国への恭順をアピールするため、反乱鎮圧の尖兵として「日本兵のような」騎兵連隊をチベットへ送り込まなければならなかった。同じ少数民族であり、同じ仏教を信じるチベットへ、である。そして伝統ある騎兵隊も、文革後は粛正されてしまう。なんと悲しく陰鬱な歴史だ。2020/11/15
√る~と
2
時代と場所があちこちするので読むのに疲れました・・・チンギスハーンの騎馬戦法がヨーロッパで取入れられ、明治陸軍に伝わり、帝国陸軍でさらに近代化された騎兵戦術がモンゴル人に受継がれた。教えたのは大日本帝国陸軍。漢族はまずモンゴル族を圧迫殺戮し、続いて中共はモンゴル騎兵を使ってチベット族を圧迫殺戮した。今日再びモンゴル族が圧迫されているのです。これらには日本にも責任があると筆者は述べています。そして日本は物申さねばならないと語っています。中共から見たら日本も少数民族なのでしょう。中共かなりヤバい。ほんと怖い。2020/10/12
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