内容説明
わずか60秒のなかに、いったいいくつの人生が込められているのだろう……。クリスマス前のある日、ヒースウィックの町で複数の爆発事故が同時に起きた。未曾有の大惨事。だが事故の因果関係は半年が経っても明らかにされていない……。クリスマスに娘が会いに来るのを楽しみにしている老人、一世一代の大葬儀を前にした葬儀屋の主、次期選挙を控えた不倫中の政治家、就職の面接を目前にした冴えない若者、校外学習に向かういたずらっ子を満載したバス、だれかれかまわず話しかけて漫談を聞かせる物乞い……。1章が1秒という短い章のなかに、登場人物たちの人生のひとコマを凝縮し、見事に描いた異色の傑作。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
107
アイデアとしては面白いのだけど。半分くらいまでは、一人の一人のことをしっかり読むつもりでいたが、後半はどうでも良くなってきた。吹き出し付きのマンガとかで読むと楽しいかも2020/01/22
藤月はな(灯れ松明の火)
71
何気ない日常が何時までも続くなんて細い糸のような奇跡に近いことなのだ。爆発事故で亡くなった人々の最後の一分間。たった1秒、されど1秒の間に人々の感情はは揺らぐ。それは生きているからできる変化だからだ。もう、変化することもできない、永遠になってしまった死者達に対して余りにも的外れで自己中心的で軽々しい生者達の言動には空虚さしかない。2016/04/03
けろりん
49
【第124回海外作品読書会」チック・タックと時が刻まれる。読者には予め提示された爆発事故。その1分前の1秒1秒を章立てし、ある街の一角の朝の光景を切り取った意欲作。ごくありふれた人々の日常に迫り来る運命の時。事故なのか、テロなのか。不穏な気配、怪しい人物。老若男女、多数の街の住人が章ごとに登場し、それぞれの情報が読者の中に蓄積されるので、焦燥が募る。どうか皆無事でいて欲しいと。半年後の後日談は、蛇足の感があるけれど、運命の皮肉、人の命の儚さ愛おしさが胸に迫る。読了後、表紙の絵を見返して改めて感慨に耽った。2018/12/28
ちえ
42
小さな町での爆発事故までの1分間を1秒刻みでそこにいる人々それぞれの動き、思いを描いていく。発想は面白いが登場人物一人一人のその時その時の状況を読みながら追っていくのが大変。結局、飛行機はどうだったの?という気持ちも。一秒一秒の短い文章の積み重ねのあとで、半年後の後日談は冗長に感じてしまう。そこで(え?この人が…)と思いもかけない人物が生き延びていることが分かったり。2022/10/09
くさてる
24
イギリスの片田舎の町で起こった連続爆破事件。運命の瞬間にいたるまでの1分間を1秒ずつに解体して、その場に居合わせた様々なひとびとのそれまでの人生や想い、生活を語っていく形式の物語。数字で語られがちな事故の犠牲者たちだけど、ひとりひとりに生きてきた道のりがある、という当たり前な事実を噛み締めるような読後感だった。読みやすかったです。ただ、1秒というには情報量が多すぎて、1分に感じられるような内容だったかも。2015/01/09