内容説明
元芸者の右京は、亡き夫の後を継いで広小路を仕切る元締となった。ある日、美人で評判の娘が行方知れずになり、数日後に家に戻っても引きこもってしまう、という出来事が続いていることを知り、調べを始めたが……(「花晒し」)。急逝した著者の最後の連作短編のほか、新人賞を受賞した幻のデビュー作を特別収録。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
はつばあば
36
遺稿となったこの作品。人の助けを借りながらも広小路を束ねる元締め右京は、はかない色気をもつ可憐な女性。性的被害者に寄り添い、町の揉め事を処理する姿が女性らしく、元締めとして、また恋する女性としての成長の続きを切望するも叶わず。早世されたから良い本だと取り上げられているのではない。産まれ育った東北地方の自然と人々の奥ゆかしさと、ほのかな色気を含む文体が心を掴んだのだろう。2015/06/21
goro@80.7
28
北重人の遺稿集。時代物と特別編としてデビュー作の現代もののミステリーが一篇。広小路を仕切る元芸者右京姐さんの連作短編が3篇あるけどこれはシリーズ化したかったんだろうな。続きが読みたかった。好きなのは「稲荷繁盛記」、地上げにあってる裏店を救うべく裏店奥に小さなお稲荷様でひと芝居を打ちながらの面々の活躍が微笑ましく応援してたのに人生全て丸く収まる事はないのだなと切ない物語。でもこれは「あれ」が嫉妬して連れてったんだなと思う事にしようと。北重人、本当に惜しい。未読の方は「夏の椿」から是非。2016/04/30
サンディK32
12
月末にやっと読了。たっぷりと北重人の余韻を味わえました。もう新作に会えない寂しさと、巻末のデヴュー作にやっと出会えた歓びと… “汐のなごり”で味わえた胸奥からの感動を想い起こしつつ、改めて合掌。2015/05/31
カノコ
8
初めて読む作家さん。どうやら、これが遺作のようですね…。大人の時代小説といった感じで、上手くいかない、そんなに人生は甘くない、そう切々と訴えてくるようである。しかし、文章はとてもしっとりとしていて、これがポスト藤沢周平と言われた所以なのだろう。他の作品も是非読んでみたくなった。2015/07/11
ふみえ
6
元締めの右京さんのお話が中途半端だなと思ったら遺稿集だったんだ。もう続きはないんだ、残念。デビュー作の現代物もちょっと恐かった。地味な作品集だが悪くない。2016/05/28