小学館文庫 復興の書店

著者名：稲泉連【著】

小学館（2014/11発売）

• ISBN：9784094061017

内容説明

感動ドキュメント「書店員たちの3.11」

震災は、ただでさえ「街の本屋」が消えつつあった東北地方の書店関係者を悲観させた。岩手、宮城、福島の3県で被災した書店は391店。3県の書店数の約9割にあたる。
そんななか、仙台の一部の書店がいち早く営業を再開させたのは3月22日である。流通が止まり、商品は震災以前のものだった。
だが、そこで目にしたのは驚くべき光景だった――。開店前から長蛇の列が連なり、パズル誌、中古車情報誌、お礼状の書き方の本･･････あらゆるジャンルの本が買い求められていた。
それは何も仙台の書店に限った風景ではない。苦難をのり超えて、開店した多くの店舗で、活字に飢えているとしか言いようのない人々の姿が目撃されている。本はただの「情報」ではない。人々にとって「生活必需品」だった。
本書では、大宅賞作家・稲泉連氏が、被災地における書店の「歩み」を記録することで、ネット注文や電子書籍が一般化しつつある昨今の出版界における、書店の「存在意義」そして、紙の書籍の「尊さ」を再発見していく。
文庫版（電子版）には、震災から3年半を経た東北の書店の「現実」を綴った補章と、本書にも登場する元書店員・佐藤純子さんの特別手記が収録されている。

感想・レビュー

※以下の感想・レビューは、株式会社ドワンゴの提供する「読書メーター」によるものです。

[三代目 びあだいまおう]

『震災当日からの日々は人と人とが支え合い、繋がり合わなければ乗り越えられないものだった...(中略)　頑張んなきゃいけない、繋がらなきゃいけない、皆のために、っていうことが当たり前みたいになって、自分のため、自分だけのための時間を作ることがとても難しかった...(本文引用)』未曾有の被害をもたらした大震災、殆どの書店も壊滅状態。絶望に打ちひしがれたあの時の人々に、本という名の希望を何としても届けようとした！努力だけで太刀打ちできない『絶望』相手に、本の力を信じた東北書店員さん達の熱い志と信念に敬礼‼️🙇

2020/05/03

[Hideto-S@仮想書店 月舟書房]

「明日からでも営業しなさい」。丸善・ジュンク堂書店の工藤恭孝会長は震災直後の3月、被災地の店舗を任せている店長たちに強く指示したという。店が入っている商業施設が立入禁止になっていても「書店だけは開けなくてはいけない」。阪神・淡路大震災を経験した工藤氏は『心を充電するツール』として本の必要性を確信していたからだ……。被災地の書店が復興へ挑む道程を追ったドキュメンタリー。仮設商店街でテントの仮店舗を開いた店主。避難所で本を待つ人々のために移動書店を始めた店主。活字の力を信じる人々の奮闘ぶりに心が震えた。

2016/03/17

[Shinji]

震災後の書店の在り方や復興をめぐるドキュメント。生命を繋ぐ為のライフライン等のインフラ整備が最優先される状況下での「本」の持つチカラ、書店員さんの想いに胸が熱くなりました。震災直後の書店再開が、使命感や書籍関係者本人の想いからかもしれないけど、待ち望まれてた上情報としてのツールはもちろん娯楽としても必要とされていたという事実に嬉しさが込み上げました。再開への辛苦やその後の書店の実情、経営撤退等の順調ではない様子には祈るしかないが、その事実を知る事が出来た本書に感謝です。

2017/02/16

[しいたけ]

震災後に抱えた書店員のジレンマ。いまここで、本を必要とする人などいるのだろうか。だが人々は確かに本を求めた。これは被災していない、体感していない私には計り知れない思いだ。それでも熱いものは伝わってくる。「震災が浮かび上がらせたのは、本屋は何となくあるようでいて、そんなふうに街の何かを支えている存在なのだということなのではないか。」本とは、あの日目の前から消えていった記憶だったのか。被災者でありながら被災者のために本屋を復興する。切迫した場面で試される仕事への誇り。尊敬してやまない。

2017/03/12

[ぶんこ]

震災直後、食糧を求める行列だけではなく、本を求める行列が出来たというのには胸が熱くなりました。書店員だけではなくトーハンなどの取次店の人々などの使命感にも胸熱。そして飯館村営の「ほんの森いいたて」という本屋さんは、本好きな人ならば憧れてしまう環境。ここの店員さんになりたいと思いつつ読んだ人も多いと思う。そこが除染作業事務所となってしまった。熱い思いを語っていらした佐藤純子さんのジュンク堂は閉店。文庫版加筆に書かれていた数々に衝撃を受けました。唯一ホッとしたのが「一頁堂」が存続している事。

2020/01/09