内容説明
「同じ場所にとどまるためには全力で走り続けなければならない」(キャロル『鏡の国のアリス』に登場する赤の女王の言葉)。生物の種も、生き残るためには常に環境の変化に対応し進化し続けなければならない。そもそも人間にはなぜ性が存在するのか。普遍的な「人間の本性(ヒューマン・ネイチャー)」なるものはあるのか。それは男女間で異なるのか。科学啓蒙家リドレーが、進化生物学に基づいて性の起源と進化の謎に迫る。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
97
7月から読み始め先月末、ようやく読了。クジャクの尾羽がどうのこうのと、オスの尾羽が立派な理由について考察が延々と続き、途中他の本へ何度か浮気。しかし「最初は進化の基礎の部分だから退屈でも端折らず読め」と著者は予め注意喚起している。人間の本性を探求するのはそれからだ。確かに、第6章「一夫多妻と男の本性」第7章「一夫一妻と女の本性」に入ると俄然面白くなる。自分自身の心情や世間の男女の行動を引き写してみれば、ニヤリとしたり深く納得したり。進化論に関し自然淘汰に比べ余り知られていない性淘汰について詳しく論ずる。⇒2024/08/31
つねじろう
71
真っ赤なドレスを着た女王が盛り上がった白い胸を貴方に押しつけて来て上目遣いにコルセットがキツイから緩めて下さる?とかペチコートをたくし上げペディキュアの似合う脚を差し出しわたしの足をお舐め!と云う話を期待すると裏切られる。でもセックスと云う文字だけで興奮する年代やワムシやミドリムシ、クジャクやゾウアザラシのセックスライフに関心が有る人は鼻血モノかもしれない。セックスは寄生主から遺伝子を守る為に存在すると云う理論を様々な学説を引用しながら展開する。そう云う知的興奮は有るけど貴方と私の好きな興奮は有りません。2014/12/12
Vakira
42
性と進化の関係にいまだに興味があり、関連図書を発見すると思わず読んでしまう。生命のつなぎ方は例外もあるが、ざっくり大きく分けると、分裂方式と遺伝子交換による新たな生命誕生方式の2つある。単細胞生物は、ある程度成長すると自分を分裂させ生命を繋ぐ。性保有生物は♀♂の性があり遺伝子を交換して新しい生命を生み出す。そしてやがて親は老化して命が亡くなる。 この性保有生物。これを人間的表現に代えれば命を繋ぐために愛があり、愛が存在する代償として死が存在する。愛と死が今まで命を繋いできた。エロスとタナトス。2016/10/07
やいっち
27
大隅典子氏(東北大学大学院医学系研究科教授)によると、『性』は進化問題の女王である! 自然淘汰は全生命の進化に関わるとすると、人間がある時点で急激に脳が肥大化したのは、人間の人間に対する軍拡競争があり、生きる糧を求めての生存闘争もあるが、男性女性を問わず、性に絡む戦術戦略が深く関わっている。数少ない卵子を肝とする女と、際限のない精子…数打ちゃ当たる男との鬼気迫る戦い。いろんな説が紹介されていて、主に性を巡っての頭の体操になった。遅きに失したけれど、いつかは読みたいと思ってきた本。読了。2018/06/17
たまきら
26
何を書かせてもそつのない著者だから、セックスという普遍の題材も小気味よく料理してある。すべては時とともに生き続けるため。様々な生物的戦略も面白かったけれど、人間という社会動物がつくりあげた「進化」についての考察がとても面白かった。2020/05/28