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内容説明
東日本大震災で起きた日本の鉄道史上未曾有の事態……それから3年半、断たれた鉄路はどうなっているのか? なぜ「あまちゃん」にはJRが映らなかったのか? 車窓に目をこらし、歴史に耳を澄ませ、日本を読み解く、唯一無二の“鉄”コラム集! (講談社現代新書)
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
まーくん
89
たいそうな題名だが、要するに”鉄ちゃん”のエッセイです…とは言い切れない。さすが政治思想学者にして近代皇室に詳しい”鉄学者”、ちょっとした文明論かも知れない。部屋で見つけた高校生時代に武蔵野線東浦和駅で買った切符から、見沼の辺りで出会った女性を想う。後の院生時代、復古神道研究で訪ねたクシイナダヒメを祭った氷川女体神社がその場所であったことに気づき、かの女性はその化身ではなかったかと思う。ー私はこの記述に、松本清張・未完の大作「神々の乱心」の冒頭部分が二重写しになった。舞台は昭和初期の東武東上線…近い!2020/04/26
Mumiu
42
トワイライトエクスプレスが来春、その歴史の幕を閉じる。憧れていたけれど、結局は縁がなかったようだ。列車の旅はお金もそうだけど、時間もたくさんほしくてハードルが高いです。最後の「はととつばめ」に作者の描く夢を見たが、これを実現できる人は優雅だよね。一方、震災を絡めながらの地方と鉄道、経営者と鉄道と道路、こちらは考えれば考えるほど行き詰まる。鉄道までの距離が大きい場所に住まう人もいるし、いつまでも車を運転できるわけじゃないからね。2014/12/15
*
21
柿生に皇居移転計画があったとは...。小田急ユーザー以外にはあまり見慣れぬ地名だけに、もし実現していたらどうなった?と妄想が膨らむ(笑)▼村上春樹の『色彩を持たない~』の(鉄道ファン目線の)考察も少しあって、お得感▼災害で鉄道が被害を受けてしまったら、話し合うよりも先にとにかく運転再開が大事!という考え方が新鮮だった▼多摩ニュータウン近辺に通っていた時期があったので、住民のつぶやき小説(?)はリアルに感じた。2018/07/24
イボンヌ
13
ラジオでコメントする原武史さんとはまた印象の異なる文章で楽しめました。 村上春樹さんや神谷美恵子さんの引用もあり。鉄道旅に出たくなりました。2020/03/14
みのくま
11
鉄道とはただの移動手段ではない。それは近代日本の象徴であり、共同体の中心であり、沿線文化の起源である。だからこそ「思索の源泉」なのだ。著者は東日本大震災後の東北の鉄道から、バスでは作れない乗客たちの「公共圏」を発見する。そして圧巻は、かつて走っていた客車特急「つばめ」と「はと」が現代に復活したら…という仮想の乗車記だ。スピードのみに価値を置いた新幹線では得られない経験を、少しノスタルジックな筆致で書かれたこの小品は、ぼくたちが失ったものを残酷に抉り出す。著者の原武史氏は政治学者である事を忘れてはならない。2019/08/12