内容説明
手配犯の顔を脳に焼き付け、雑踏で探す見当たり捜査。記憶、視力、直感だけが頼りの任務に就く警視庁の白戸は無逮捕が続き、刑事としての自信、存在意義を見失いかけていた。そんな時、見つけたのが死んだはずの元刑事。白戸が追い始めると元刑事にまつわる陰謀が露見する……。超デジタル時代に究極のアナログ捜査を貫く刑事を描く迫真の警察小説。
感想・レビュー
※以下の感想・レビューは、株式会社ブックウォーカーの提供する「読書メーター」によるものです。
ケイ
109
デビュー作とも最新作とも、少しエッチな作品たちとも明らかに違う。40に手が届く中年の刑事が主人公。読みながら、これは本当に羽田さんの作品かと表紙を一度見直した。今野敏が堂場瞬一ではないのかと思えるほどの書きっぷり。普通の刑事ではなく、500人もの指名手配犯を記憶し、当てもないまま雑踏の中から探していく様子がすごくリアルだ。何気ないようで物凄く集中してい見ているのに、対象がくると急に視点が弛緩する感じが主人公の横で想像できるのだ。最後の最後まで、手を抜かない小説だった。解説は西加奈子氏。2015/09/01
優希
100
面白かったです。「顔」という認識から世の中を洞察したことを書きたかったような気がしました。手配犯の顔を頭に焼き付けて、雑踏の中での手当たり捜査。そのアナログさこそ世間を独自の視点で見ていることだと思いました。捜査の緊張感に気分が昂揚します。様々な視点が織り込まれているので、自分の見ている世界が偏っていることを気づかされます。2016/04/21
H!deking
69
見当たり捜査もの。うーん、面白くないことはないんだけど、いかんせん途中が長い。彼女との顛末は逆にもうちょっと膨らませて欲しかったな。結末もわかったようなわからないような。見当たり捜査だとトカジさんの方が好みでしたw2018/04/21
巨峰
67
五百人もの顔写真の記憶を手がかりに繁華街の雑踏の中からひたすら指名手配犯を見つけ出すのが仕事の見当たり捜査官たちが主人公。頼れるのは自らの眼と記憶だけ。純文学作家のクライムサスペンスとして中村文則さんの「すり」や高村薫さんの「地を這う虫」あたりを思い出しました。ちょっと話を大きくしすぎとも思いましたが、この小説も、重厚で面白かったです。おすすめ☆2015/07/20
アッシュ姉
59
数百人の指名手配犯の写真を覚え、雑踏の中から顔を探す見当たり捜査。記憶と直感を頼りに、ひたすらアンテナに掛かるのを待つ集中力と忍耐力を必要とする任務に興味津々で読み進めたが、来る日も来る日もひたすら街を歩き続け、数か月も無逮捕が続き悶々とする描写が繰り返し出てくるので、だんだん飽きてきてどうにか読み終えました。疲れたゼーゼー。大きな展開もなく、結末も何だかぼんやり。連作短編のように区切りがあったら、読みやすかったかもしれない。少し時間をおいて、次は『黒冷水』にいってみます。2015/10/15